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無意識?
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無言で車を走らせる。車の中には少し前に流行ったポップな音楽が流れていた。
走り始めて、30分くらい経ち、車の外は田園風景に変わっていた。
オレ、別に来なくてもよかったんじゃない?
そんなことを思いながら外を眺めていた時だった。
「手、貸して」
急に、須栗さんがそんなことを言った。
車のコンソールボックス辺りに掌を上に向けた須栗さんの手が視界に入る。
その指がオレの手を呼ぶように、くいっと動く。
何を意図しているんだろう……。
また、オレをからかっているのかな?
須栗さんは正面を見たまま。
にやつくわけでもなく、真剣に運転をしているようにしか見えない。
無意識?
オレはそっと、その手に自分の手を重ねてみた。
須栗さんの手は、オレの手をきゅっと握る。握手をしているようなそんな繋ぎ方。
須栗さんの手が暖かくて、優しくて、心がぎゅっと締め付けられた。
オレは手を繋いだまま、視線を外に飛ばす。
……これはオレを求めているんじゃない。
きっと、なにか、あったんだ。
淋しかったのかな? 嫌なこと、あったのかな?
オレの手で良かったら、貸してあげる。慰めてあげる。
……でも。
本当はもっと柔らかくて、しなやかな手の方がいいよね。
女の人の手の方が……いいよね。
男のオレじゃ……ダメ、だよね。
オレは、須栗さんの手を、きゅっと握り返した。
「あっ……ごめん!」
慌てたように須栗さんの手がオレから離れて行った。
須栗さんの瞳が、ちらっとオレを見る。
「別に……」
オレは何も気にしていないというように、外を見ながら、ぶっきらぼうに言葉を吐いた。
須栗さんの手の温もり……オレの手は、まだその余韻に浸っていた。
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