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手、繋ぎますか?
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車中で手を放されてから、オレはどんな風に振る舞ったらいいのかわからずに、須栗さんを見れなかった。
海を見ようという須栗さんの言葉に、車を降りて、砂浜を歩く。
海なんてそうそう来れる訳じゃないから、写真を撮りたくなった。
数枚の海の写真を撮って、須栗さんに視線を向けると、寒そうに身体を擦っていた。
コートを脱いで、須栗さんの肩に乗せた。
「寒いんでしょ?」
振り返った須栗さんの顔は、泣きそうに歪む。
どうしたの?
オレ、なんか悪いことした?
自分のセーターを引っ張って見せる。
「オレは厚着だから平気です」
そう言って、オレは、少し笑ってみた。
須栗さんの瞳から涙が零れてしまった。
なにか辛いことがあったのかな?
なにか嫌なこと思い出させちゃったのかな?
須栗さんは、俯いて、目頭を抑えた。
「ごめん、ちょっと……」
「手、繋ぎますか?」
少しでも……オレでもあなたを癒せますか?
須栗さんは差し出したオレの手をそっと握った。
きゅっと握られたオレの手。一緒に心まできゅっと握られた気がした。
でも。
間違えちゃいけない。期待してはいけない。
この手は、今の辛い気持ちを、一時……ほんの一瞬、誤魔化すために握られただけ。
オレ、本当は、抱きしめたかった。
でも、それはなんか違う気がした。
だって、きっと、須栗さんが求めているのは、オレじゃないから。
男同士で手を繋ぐことも、おかしいと思うけど、抱きしめるのは、もっと……違う気がした。
でも、少しでも、あなたを癒せればいいな、と思ったんだ。
愛生さんの手がオレを癒してくれたみたいに……。
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