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運転するための眼鏡
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駐車場まで戻る道すがら、袮緒が口を開く。
「その眼だと……運転、辛いですよね?」
そう言って、袮緒はトートバックから何かのケースを取り出した。
「オレ、運転しますよ。……自分の車、運転されるの嫌ですか?」
祢緒は、心配そうに、少し眉を寄せる。
「俺は別に気にしないけど、慣れない車だと運転しづらくない?」
ポケットからキーを取りだし、袮緒に差し出す。
袮緒は、ほっとしたような表情で、キーを受け取った。
「大丈夫です、たまに運転してる親の車と同じ車種なんで」
色は違いますけどね、と素っ気ない感じで運転席に乗り込んだ。
座席を調節しながら、保険大丈夫ですか? 事故るつもりはないですけど、と俺に確認する。俺は、大丈夫だよ、と少し笑った。
袮緒は先程のケースからメガネを取り出す。
「目、悪いの?」
「運転する時だけです。普段は困らないので……」
袮緒は細い黒色のフレームの地味なメガネをかけ、似合わないですよね? と鼻で笑った。
運転する時だけのメガネ持ってくるって……。
俺が疲れたら、途中で運転、代わってくれるつもりだったのかな……。
なんかすげぇ優しいな……お前。
運転中、袮緒は何度かメガネを中指でずり上げる。
「緩いの?」
「ちょっと……ネジがダメになってて」
そう言って、また、細く長い指先でメガネをずり上げる。
「次はメガネ、買いに行くか?」
祢緒は、信号で止まったタイミングで、俺を見る。『次』という言葉に少し戸惑っているような表情で。
「俺が選んでやるよっ。お前に似合うヤツ」
そう言って、にやっと笑うと、袮緒は呆れたような顔をした後、正面に向き直り、クスッと笑った。
「自信満々ですね……」
「センスには自信あるよ。伊達に歳はくってない」
袮緒がまた、クスッと笑いながら、歳は関係ないと思いますけど…と呟き、アクセルを踏み込んだ。
本当は、自分好みに色づけしたいだけ……。
俺の選んだもので、俺色に染まればいい…そんなことを考えてしまった。
もう一度……今度は、楽しい時間を共有したい……。
袮緒の笑顔がもっと俺を見るように。
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