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何が起こるわけでもない
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約束の日曜日。オレは朝からそわそわしていた。
13時に待ち合わせたコンビニにも、今回は10分前に到着してしまった。
今度はオレが、雑誌を立ち読みしながら、須栗さんが訪れるのを待つ。
でも、雑誌の内容は一切、オレの頭には入ってこなかった。オレの神経は目の前の駐車場に集中していた。
オレはきっと、もう、須栗さんに恋心を抱いている……。
もう、本気の恋はしない……つもり、だったのに。
好きになるつもり、なかったんだけどな……。
駐車場に入ってきた須栗さんの車を見つけて、慌てて雑誌を置き、店を出る。
気持ちは慌てているけど、動作は緩慢。こんなに浮かれている気持ちが人に……須栗さんにバレるのは、まずいから。
ゆっくりとコンビニの扉を開けると、シートベルトに手をかける車内の須栗さんと目が合った。
須栗さんは、にこっとオレに笑いかけ、手を止めた。
オレは、すっと視線を外して、車に近づいた。
赤くなってないかな? バレてないかな?
ゆっくりと助手席の扉を開ける。
「待たせて、ごめんな」
乗り込むオレに、須栗さんは申し訳なさそうに謝る。
「待ってないですよ。てか、まだ時間前ですよ」
いつものようにさらっと言葉を吐く。
時間は13時の5分前だった。須栗さんには視線を向けず、オレはくすっと笑ってしまう。
「本当だな」
ははっと笑う須栗さんの声。
「メガネ……どこで買う? こだわりは?」
「ないです……すいません」
オレのメガネを買いに行くのに、行く店を何も考えていなかった。
須栗さんに会える、それだけで胸がいっぱいで頭が働いていなかった。
「なに、謝ってんの?」
須栗さんは車を出しながら、ふっと笑った。
適当に探すか、と須栗さんは車を発進させた。
車の中の2人だけの空間。
須栗さんの声にオレの心臓は否が応でもドキドキと鳴る。
何が起こるわけでもないのに……。
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