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募る想い
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「申し訳ございません……」
購入の手続きをしていたら、店員が申し訳なさそうに口を開いた。
「こちらの商品、現品しかないのですが、ここがちょっと緩くなってまして……」
と、接続部分を折り曲げてみせ、オレに手渡す。確かに、少し緩んでいる。
「お取り寄せで、1週間ほどでお渡しできると思うのですが……」
よろしいでしょうか? と、本当に申し訳なさそうにオレに問う。
少し、交通の便が悪いところにあるショッピングモールだった。
オレは少し戸惑ってしまった。
「かまいませんよ」
須栗さんが横から、にこりと店員に承諾の意を示した。
店員は、ほっとした顔をして、では……と一端奥に向かう。
「また、来週、来ればいいよ。俺、車出すし」
そう言って、須栗さんはオレに笑む。
「すいません」
気にするなって、と須栗さんはオレの頭をくしゃっと撫ぜた。
でも、少し嬉しかった。
また、来週。オレは須栗さんに会える……。
戻ってきた店員が金額を提示する。
出されたコイントレーに、横から須栗さんがお金を置く。
「あっ、えっ?」
横の須栗さんに視線を向けると、にこっと微笑む。
「この前の罰金」
オレは、何に対する罰金なのか理解できずに、目を瞬く。
「つまんなかっただろ? ドライブ」
「そんなことないです。ダメですよ、高過ぎます」
言い放ち、オレは、そのお金を戻そうと手を伸ばす。その手を須栗さんにやんわりと抑えられた。
須栗さんの手の感触にドキッとしてしまい、一瞬、動きが止まる。
須栗さんは店員に早く持って行けというように、目で合図する。
店員は少し戸惑いながらも、それを持ち、奥へと消えて行った。
オレの口から、はぁっと深いため息が漏れた。
どうしよう。
たぶん須栗さんのこの行為に深い意味はない。
でも、オレにとっては好きな人に買ってもらった、初めての物。
嬉しくて仕方ない。
須栗さんは黙ってオレの頭をくしゃっと撫ぜた。
想ったところで叶わない恋、なのにオレはどんどん須栗さんに想いを募らせる……。
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