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助手席の扉が開く
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ショッピングモールを出て、少しドライブをしようかと近場で車を走らせる。
「なぁ、俺と居て……楽しい?」
「……うん、それなりには、ね」
くすっと笑う袮緒の声が聞こえる。
「俺、袮緒と居ると楽しいんだ……」
俺は袮緒と一緒に居たい。
もっと、袮緒のことが知りたい……。
「俺、袮緒のこと、好き、だわ」
ほろっと零れ落ちた言葉。
自分の発した言葉に、顔が赤らむのを感じる。
袮緒の様子を窺うように、ちらっと視線を向ける。
袮緒は、外を見ているだけで、何の反応も示さなかった。
「袮緒? 聞いて、た?」
「聞こえてた、よ」
信号待ちで止まった際に、袮緒の方へ顔を向けた。
俺の動作に比例するように、袮緒は大きく首を逸らせ、表情を隠した。
「ごめん、イヤ、だった?」
俺だけが袮緒のことを好きなのだろうか……。
焦り過ぎたのか?……もう少し、時間をかけるべきだったのか?
でも、漏れてしまった言葉をなかったことには、できない。
「……そんなこと、ないよ」
袮緒は外を見つめながら、言葉を呟く。
イヤじゃない……それはどういう意味?
なんでこっちを見ない?
なんで表情を隠すんだ?
少し車を走らせ、車通りのない道路で、路肩に駐車した。
シートベルトを外し、右手を袮緒の顎に手を掛ける。
袮緒に俺の気持ちが……言葉の意味が通じていないのか?
俺は恋愛感情での『好き』だった。でも、袮緒には届いてない。
そんな気がして、行動で示そうと思った。
袮緒の顔をくいっと俺に向ける。そのまま、キスをしようと思った。
こちらに向いた袮緒の顔が、ゆるりと歪む。
瞳から涙が零れ落ちた。
苦しそうに、顔を歪め、祢緒が、泣いた……。
ほんの少し前まで、楽しそうに笑っていたのに。
急に袮緒が、泣いた。……俺が、泣かせた?
突然のことに動揺を隠せない俺の手を、袮緒の手がぐいっと払い除け、助手席の扉が開かれる。
袮緒は、無言のまま、車を降り、車の入れない遊歩道へと歩き去った。
俺は何が起きているのか、理解できなかった……。動け、なかった。
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