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すべてを包み込む
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きゅっと目を瞑り、ゆっくりと流生から顔を背ける。
流生の右手が俺の頬をするっと滑る。促されるように視線が流生に戻る。
「して……? チューして?」
甘い声で俺に請う。向けた視線の先には、物欲しそうに俺を見つめる流生の瞳。
流生の瞳の中で光がくるんと弧を描く。
「操(みさお)……」
高い位置から優しい声が落ちてきた。
視線を向けると、悲しそうに微笑む1人の男が佇んでいる。
「帰るよ……」
操……流生の本名を呼ぶ、寒田 素直(かんだ すなお)は流生の腕に手をかけ、優しく俺から引き剥がす。
流生は、その腕に、しぶしぶ俺から身体を離し、立ち上がる。その顔からさっきの妖艶さは消えていた。面白くなさそうに、素直を睨み上げる。
「すいません……」
素直は、切なげな表情で俺に謝り、背を向けている流生の頭を優しく撫ぜる。
流生は、頭を撫ぜる素直の手をゆるりと払い除けた。
「操……怒らないで……」
素直は、流生を胸に抱き込み、髪に口づける。
「何をしてもいいけど、無理強いしちゃいけない、ね?」
流生を叱る素直は、優しく諭すように言葉を紡ぐ。
「保護者面すんなっ。同い年のクセにっ」
流生は器用に素直の腕をすり抜け、すたすたとバーを出て行った。
「本当に、すいませんでした……」
俺にぺこりと頭を下げ、悲しげに笑み、素直は流生の後を追った。
素直の流生に対する仕草を見ていると、素直は流生のことを本当に愛しているのだろうと感じる。流生がどんなむちゃなことをしようと、誰と何をしようと素直は流生のすべてをわかっていて、包み込む。受け入れる。
袮緒……、俺、袮緒に会いたいよ。
俺も素直のようにお前のすべてを受け入れたい、愛したい。
俺の恋はもう、終わり…なのか?
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