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誰でも照れる
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「この前、お前の話をしているとき、袮緒、ちょっと嬉しそうだったんだ」
ビールグラスを見つめながら愛生は、たぶん、その時の光景を思い出している。顔が柔らかく綻ぶ。
「だから、お前なら、袮緒のこと、わかってやれるんじゃないかって、袮緒も心を許すんじゃないかって、思ったんだ」
愛生の視線が俺に向く。愛生は困ったように微笑んだ。
変なこと言ってごめんな、と苦笑する。
「俺も……わかんないんだよ、あいつの気持ち……」
俺は、ため息と同時に言葉を吐き出した。
「告白したら、泣かれて……逃げられた……」
なんで泣いたのか。なんで逃げたのか。
どんなに考えても、その答えは祢緒にしかわからない……。
愛生が眉間に皺を寄せ、俺を見ながら、口を開いた。
「ちなみに、だけど……どんな風に?」
今度は俺が、眉間に皺を寄せる。
「いや、それ、本当に愛の告白……だった?」
「まぁ。俺的には……『好き』って言葉と、こうキスしようかなって、顎を……」
そう言って、愛生の顎を掴み、くいっとこちらに向ける。
なぜか、愛生の顔が瞬間的に赤みを帯びた。
「ばっ……」
愛生の手が、慌てたように俺の手を払い除けた。
「なんで赤くなってんの?」
ははっと笑うと、愛生が俺の頭を小突いた。
「意識してなくても、そんなことされたら誰でも照れるよっ」
愛生は、口元を片手で押さえて俯き、ふぅっと息を吐く。
それから、何かを考えているように、口元に添えている手の人差し指がとんとんと顔を叩く。
「袮緒……からかわれたと思っていない?」
急に、俺に向き直り、愛生が言葉を発した。
俺は怪訝な顔で愛生を見る。
「最初に会ったときに、お前、袮緒のことこうやってからかったよね?」
思い当たる節が……ある。確かに、初対面で袮緒の本心を覗きたくて、こんなからかい方をした……。
「俺が意地悪でしたと思ってるってことか?」
俺の口から、盛大なため息が漏れた。
俺は、こめかみを片手で押さえ、項垂れるしかなかった。
やっぱり伝わっていない。
なんであんなことしたんだよ、俺。
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