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心につく傷は、半端ない
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「……からかわれただけで泣くか?」
疑問が口を衝いて出る。
少し間をおいて、愛生が口を開いた。
「袮緒、お前のこと、好き、なんじゃないか?」
ぼそっと呟かれた愛生の言葉に、視線を向ける。
愛生の目は、記憶をたどるように、上に向く。
「それ、おかしいだろ」
不審げな声に愛生は、きょとんとした顔を俺に向けた。
「好きな奴に告白されて、泣いて逃げるって変じゃね?」
「でも、袮緒が泣くって……あの失恋ぐらいしか記憶にないんだよ」
俺の言葉に、愛生は、また困ったように眉根を寄せる。
はっとしたように、愛生が顔を上げた。
「ごめん。オレ、言ってないよ」
俺は、愛生が何を言いたいのかがわからずに、顔で疑問符を投げかける。
「お前が、そっちだって」
そっち? ……ゲイってこと?
「やっぱり、怖いんじゃないの? そう言うのがバレるのって……」
愛生が不安そうな視線を俺に向ける。
確かに。普通の…ノンケ相手に恋愛なんてしたら、心につく傷は、半端ない……。
不意に元彼の残像が蘇る。
俺はぎりっと奥歯を噛みしめる。
「今度はちゃんと告白、してみなよ……」
愛生の声に目を向ける。愛生は、ビールグラスを傾けながら、くすっと笑った。何かを企んでいるようなそんな笑い声だった。
「もう一度、袮緒に会うチャンス、作ってあげるよ」
普通に誘っても、袮緒のことだからきっと来ないだろうからね、と、愛生は俺に、にこりと笑って見せた。
会計の時に財布から見えた引換証。
愛生に託すのは止めた。
次に袮緒に会えた時、自分であいつに渡す。
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