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すごく会いたかった
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バーを出てほんの少しの距離で、須栗さんの手が、がしっと俺の腕を捕まえた。
「なんで逃げるんだよ!」
オレは腕を掴まれたまま、振り返ることもできずに、立ち尽くす。背中から須栗さんの声がする。
「俺が泣いた時、お前は俺と手を繋いで一緒に居てくれたよな? なのに、なんでお前は逃げたんだ?」
須栗さんが、オレを振り向かせようと、掴んでいる腕をくっと引く。オレは頑として振り返らない。
オレ、須栗さんの顔、見れないよ。
「そんなに俺に会いたくなかったのか?」
淋しそうな須栗さんの声が背中に響く。
会いたくないわけ、ない。オレ、すごく会いたかった。
でも、無理だよ。オレ……好きなんだもん。
こんなオレ、きっと須栗さんは気持ち悪いでしょ?
もう、罵られるのは……たくさんなんだ。
「俺は、すごく袮緒に会いたかった……」
そんな事、言わないでよ。
オレだって、すごく会いたかった。話したかった。
……でも、オレ、どうしていいかわかんない。
好きだけど、好きだから……嫌われたく、ない。
嫌われるくらいなら、オレの事なんて、忘れて欲しかった。
嫌われるくらいなら……オレが、忘れ去りたかった。
そうしたら、きっと、傷は残らない、から。
瞳に涙の感触。オレ、……また泣いちゃう。
どんなに頑張ったって、強がって見せたって、オレはオレにしかなれない。
弱虫で泣き虫な自分にしか、なれない……。
須栗さんがゆっくりとオレの前に回り込む。
オレは、掴まれている腕から逃げるように後ずさり、背中が側面の壁にたどり着く。壁と須栗さんに挟まれる…。
須栗さんが空いている左手でオレの頬に触れる。
「袮緒?」
悲しそうな須栗さんの瞳がオレを見上げる。オレの瞳に映る須栗さんが涙で歪んで見える。
「俺、本気でお前が好きなんだぞ?」
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