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背後から
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須栗さんの顔がゆっくりと近づいて、掬い上げる様にオレの唇を奪った。
ふわっと柔らかく、須栗さんの唇が、オレの唇に……触れた。
何が起きているか……理解、できなかった。
「こういう意味で、お前が……好き」
離れた唇で、耳まで赤く染まった須栗さんが呟いた。
オレは、そのまま腰が抜けたようにその場に座り込んだ。
須栗さんもゆっくりとオレの前にしゃがみこむ。
須栗さんの右手は、ずっとオレの腕を放さない。
オレの瞳から、ほろっと涙が落ちた。
「袮緒? ごめん……イヤ、だった?」
須栗さんが、悲しそうな、淋しそうな、切ない瞳でオレを見ている。
オレはふるふると首を振った。
わかんない。どうしよう、オレ、どうしたらいいの?
オレの心は報われたの?
須栗さんの親指がゆっくりとオレの涙を拭った。
オレを見ながら、須栗さんがゆっくりと微笑む。
オレもつられるように、にこりと……笑った。
オレの顔を見て、須栗さんは、ふぅっと安心したように息を吐いた。ゆるりと立ち上がり、オレを引き起こす。
須栗さんは黙ってオレの手を引いて、バーに向かって歩き出した。
愛生さんとは違う、須栗さんの手。慰めじゃなくて、オレに向けられた愛情の手。
タン、タン、タン……
後ろから人が近づいてくる足音が聞こた。
見られたらまずいと思い、オレは足を止め、須栗さんの手を放した。
オレと須栗さんの間には不自然な距離が生まれる。
須栗さんが立ち止まり、オレを振り返る。須栗さんの視線がオレを追い越し、背後の人物を認識したかと思うと、眉がぴくりと動いた。
足音の主は、須栗さんの側で立ち止まると、須栗さんにぎゅっと抱きついた。
えっ?
「おまっ……」
須栗さんは、彼の動きに、驚きの表情を見せる。
「もう一回、やり直し、しよ?」
抱きついているその人は、呟くと同時に須栗さんの胸元を掴み、ぐっと背伸びをした。
彼は、須栗さんの唇を見つめ、背伸びをした……。
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