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愛生と女
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「追いかけなくていいの?」
流生は悪びれる様子もなく、俺に問う。
追えない…はっきりと『もう会いません、さようなら』と決別の言葉を俺に吐いた袮緒を、俺は追うことはできない。
流生がまた、俺に絡みつく。俺は無造作に流生を払い除ける。
「ボク、愛はいらないよ?」
流生は、くりんとした屈託のない瞳で俺を見上げる。
「俺は愛が、欲しかった……愛のないセックスはもう、しない……」
流生は俺の言葉に、ふぅっと息を吐くと、面白くなさそうにバーへと入って行った。
心が……痛い。
ごめん、袮緒。
俺は袮緒を傷つけることしかできなかった。
俺はずるずると壁を背にして、座り込む。
スマホを取りだし、愛生にコールした。
愛生が用意してくれたチャンスを、俺は、俺の手で……潰した。
数回の呼び出し音の後に、愛生の声が届く。
『はい』
「愛生? ……わりぃ、袮緒、……怒らせた」
片手で髪を掻き上げ、項垂れる。俺の口からため息が漏れる。
『言ってること、わかんないんだけど?』
俺は、何をどう説明をしていいかがわからずに、口ごもる。
『とりあえず、そっち行くよ……』
愛生の口からもため息が漏れる。そのまま、通話は途切れた。
「須栗?」
どのくらい時間が経ったのかわからなかった。頭上から愛生の声が聞こえた。
視線を上げると、愛生と女が1人。俺の眉がぴくりと動く。
「今回、協力してもらったんだ」
俺の雰囲気を察して、愛生が口を開く。
「唯一のことも知ってるし、袮緒のことも知ってる……お前のことも、かな」
そう言って、困ったように愛生は笑う。
「一緒に居たから、置いてくるわけに行かなくて……」
ごめんな、と俺に謝る。
「そう……」
俺は、ふと冷静さを取り戻し、ゆるりと立ち上がった。
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