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何とも言えない
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「何があった?」
立ち上がり、壁に背中を預ける俺に、愛生が問う。俺の視線は自然と彼女に向く。
「邪魔……ですか?」
彼女は、申し訳なさそうに上目づかいで俺を見る。
女が嫌いな訳ではない。でも、好きでもない……。
そんな顔をされたところで俺はなんとも思わない。
俺と袮緒の話を聞かれるのも、あまりいい気は、しない。
「飯田も居た方がいい。袮緒のこと、お前の方がきっと、わかるから」
そう言って、愛生は、飯田と呼ばれる彼女の頭をぽんっと手を置いた。
「でも、……」
「いいよ。愛生が信頼してるなら、俺は気にしない……」
愛生がそう、言うのなら、俺は受け入れる。
愛生が袮緒のことを本当に心配していることを知っているから、俺は愛生の判断を信頼する。
告白をして、うまく行きかけたところに流生が来たこと。
流生に軽い気持ちで手を出してしまったこと。流生とは、身体だけの関係であること。
流生が俺にキスを迫ったこと。その光景を見て、袮緒が別れの言葉を言い、去って行ったこと。
俺は、愛生と飯田に話をした。
「どう思う?」
愛生は飯田に問いかける。
「……なんとも」
そんなことくらいで嫌うかなぁ…と、呟きながら、飯田は人差し指でこめかみをカリカリと掻く。
「袮緒に話を聞かないと何とも言えないですね……でも、きっと、話さないですよ」
飯田の目は困ったように愛生に向く。愛生も、だよなぁ、と呟く。
「袮緒、どこ行ったんでしょうね?」
飯田の言葉に、袮緒がコートも鞄も置きっ放しにして出て行ったことを思い出す。
「あいつ、コートも鞄も置きっ放し……」
俺は思わず、片手で顔を覆った。
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