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混じるため息
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椅子の背にかけていたスーツの上着を頭から被せられた。
「そのまま、寝てるふり、してて。送ってくから……」
愛生さんは、こっそりと小さな声で呟き、去って行った。
オレが、泣き顔を見られたくないことをわかった上での愛生さんの気遣い。
愛生さんには、なんでもお見通し。
ありがとう、愛生さん。愛生さんは素敵な人だね……。
あなたに恋をしていたら、オレはこんなに苦しい思いをしなくて済んだのかな?
……そんなこと、ない、ね。
愛生さんは、後輩としてのオレを心配してくれているだけ、だもんね……。
数分もしないうちに愛生さんが戻ってきた。
「帰るよ」
そう言いながら、中途半端なオレの帰り支度を手際よくこなす。
「ん? 袮緒、調子悪いのか?」
唯一さんの声が聞こえた。
「うん。まだ、本調子じゃないみたいだね。オレ、送ってくから今日はバスケ行けないわ。ごめんな」
「マジかっ!」
今からアッシー捕まえねぇとっ、と呟いた唯一さんの慌ただしい足音が続いた。
「本当、酷いな、アイツ……」
呆れたように笑う愛生さんの声。
「バスケ、行ってもいいですよ?」
オレは机に突っ伏したままで言葉を発する。
そのうち涙が落ち着けば、愛生さんに送ってもらわなくても、1人で帰れる……。
「行かないよ……。袮緒、オレに話してくれてもいいんじゃない?」
オレは愛生さんが何を言いたいのかわからずに無言になる。
少しの沈黙の後、愛生さんが口を開いた。
「……帰ろうか」
少しため息交じりのその言葉に、オレは愛生さんに連れられ、会社を出た。
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