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癒しの手
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「なぁ、袮緒?」
車を走らせながら、愛生さんが口を開く。
「お前、やっぱり須栗のこと好きだよな?」
唐突な、愛生さんのストレートな言いように、オレは言葉を失う。
黙っているオレに、愛生さんは淋しそうな声で問いかける。
「オレ、そんなに頼りない? ……信頼、ない?」
そんな事、ない。愛生さんはいつもオレを癒してくれた……。
「あぁ、そっか……」
愛生さんは、何かを閃いたような、納得したような声を発する。
「不公平だよな。聞くばっかりじゃ、せこいよな」
愛生さんは、ははっと少し笑う。
もう少しで家に到着する。角を曲がればオレの家だった。
愛生さんは、オレの家に着く前、曲がり角の手前で車を止めた。そして、運転席でぐいっと背伸びをする。
「オレ、飯田が好きなんだ」
勢い任せに言った愛生さんは、オレに向かって、ははっと笑う。
その顔は微かに赤みを帯びる。照れを誤魔化そうと前に向き直る。
「アイツは全然、相手にしてくれないけどな……」
やっぱ、10歳差はネックだよなぁ……と独りごちる。
「さて、オレの暴露は終わり。次は袮緒の番だよ」
そう言って、また、オレを見る。
オレの頭は、言葉を理解するのに忙しく、きょとんと愛生さんを見つめてしまった。
「人を好きな気持ちに、男とか女とか関係ないんだよ。……好きな気持ちに相手の性別なんて関係ない」
愛生さんは、柔らかくオレに笑いかける。
「……何もしてやれないかもしれないけど、オレは袮緒の力になりたいんだ。話すことで少しは袮緒が楽になれるなら、オレは、袮緒の話を聞かせて欲しいと思ってる……」
そう言って、オレの頭をぽんぽんっと叩いた。
ありがとう、愛生さん。
やっぱり、あなたの手はオレを癒してくれる。
それは愛情とは違うかもしれないけど、オレの心を、ほんのりと暖めてくれる素敵な癒しの手だと思う。
オレは本当に素敵な先輩に出会えて良かったと思っているよ。
頼りなくなんかない。オレは、あなたを全力で信頼しているよ……。
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