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溢れ出す、零れ落ちる
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何をどう話していいのかわからない。
コンッ。
愛生さんが急かすように、助手席の窓を叩いた。
『黙っていたら、伝わるもんも伝わらない』
『思っていることを全部話せ』
愛生さんの言葉が頭の中で反芻する。
全部……。
「オレ……須栗さんが、好き」
最初にオレの口を衝いて出たのは、ずっとずっと心に秘めていた想い。
嫌われたくなくて、迷惑をかけたくなくて、邪魔になりたくなくて、一生懸命に隠していた気持ちが口から零れた。心から溢れた……。
須栗さんは慌てたように、がばっと顔を上げ、オレを見る。
「……でも、オレ、邪魔、だから」
オレの言葉に、須栗さんは怪訝な顔をする。オレの言わんとしていることを理解できないというように、顔を顰めた。
「泣いちゃうくらい好きな人とオレとじゃ……勝ち目、ない」
元彼と競おうなんて思っていない。勝てるわけのない戦いを挑むほど、オレは、強くない。
乾いていた涙がまた、瞳を濡らした。
全部話してしまえばきっと、この苦しみから解放される。
行き場のない気持ちを吐き出してしまえば、楽になれるかもしれない。痛みが、和らぐかもしれない。
あなたを好きな人がここにもいる。
あなたはそんな魅力的な人でした。
それを伝えられれば、オレはそれで、いい。
そう、思ったのに……。
オレはその気持ちを、言葉に出来なかった。
言葉の代わりに、『好き』の気持ちが溢れてくる…。
……ごめんなさい。
オレは、あなたを本気で好きになってしまった。
……この気持ち、もう、……しまい、こめないんだ。
オレの目から、涙が零れ落ち始めた。
「会わないって言ったのに……ごめんなさい。好きになって……ごめんなさい」
拭っても、拭っても、涙は溢れてきた。
溢れ出た感情が涙になって零れ落ちていった…。
止めようとしても、傷が開くばかりで、痛みは一向に治まる気配はない。好きの気持ちは、止めどなく溢れ出る、零れ落ちる。
泣いていたら、須栗さんを困らせるだけなのに、オレは泣くことしかできない。困らせることしか、できない。
ごめんなさい…。
やっぱり会っちゃいけなかったんだ。
困らせたい訳じゃないのに、オレにはこの気持ちも、涙も、止めることができない。
もう、嫌だ。
どうしたら止まるの? どうしたら、楽になれるの?
お願い、助けて…。誰か、止めてよっ……。
涙を拭うオレの手がやんわりと掴まれた。
「泣かせて……ごめん」
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