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「でも、お前は邪魔なんかじゃない」
俺はゆっくりと袮緒の涙を拭う。
袮緒は必死に涙を堪えようとする。でも、抑えきれない涙が嗚咽となって漏れる。
「俺が泣いたのは、あいつのためじゃない。あいつに対して、俺は愛情なんてこれっぽちもない」
俺の言葉に、袮緒が怪訝な表情を浮かべる。
袮緒の目が見れない……。
こんな汚い俺に袮緒は愛想を尽かす。
きっと、好きの気持ちも泡となって消えていく……。
俺は、ゆっくりと祢緒から視線を外した。
恐怖が心に浸潤する。
「元彼じゃ……ないん、ですか?」
泣いてしまうほど好きだった彼ではないのか、と、嗚咽交じりの声で袮緒が俺に確認する。
「違う。あいつとはそんな関係じゃない……身体だけの……関係、だった」
そうだ。もう、愛なんていらない。そう、思っていた。
愛しても、相手の気持ち次第で切り捨てられ、淋しい思いをするなら、もう、誰も愛さない……そう、思っていた。
愛のないセックスで、快楽だけを共有した。
気持ちよくなれれば、それでいい……そう、思っていた。
でも、俺、袮緒に出会ってしまったんだ。
お前のすべてを受け入れたい、愛したいと思ったんだ……。
「キス、してた……」
違う、してないっ!
袮緒は、見ていなかったのか?
俺が、流生のキスを阻んだことを袮緒は知らなかったのか……?
恐怖を振り払うように、俺はまた、袮緒の瞳を覗き込んだ。
「してない。あいつとはもう、何もない。今後も絶対、何も、ない……」
たとえ、キスをしていなくても、今後、何もないと言ってもみても、身体だけの関係を持ったことは事実。
快楽のためだけに身体を重ねた過去は、変えられない真実。
俺の汚れた過去は、何も変わりはしない。
でも。
出来れば、出来ることならば、俺は……。
「俺、袮緒の傍に居たい……」
縋るように俺は、祢緒の瞳を見つめる。
俺を切り捨てないで、俺から離れていかないで。
お前の傍に……居させて……。
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