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穏やかに笑う
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「あり……が、とう……」
泣きながら、袮緒はそう、呟いた。でも、その口元には笑みが浮かんでいた。
俺はそっと、祢緒の涙を拭う。
涙を拭っていた俺の手を、袮緒は、ギュッと握りしめ、口元に運ぶ。
ちゅっ、とリップ音と立てて、俺の手に口づけた。
袮緒の大胆な行動に、俺は少し驚きの表情を見せる。
「あっ……すい、ません」
袮緒は、恥じらうように笑む。
嬉しくて……、と囁いたその表情は、穏やかに笑っていた。
袮緒の涙が落ち着くのを、待つ間に、車をコンビニの駐車場に入れた。
そこに愛生の車はなかった。愛生はいつの間にか帰っていたらしい。
「どう、しようか?」
ふぅっと肩で息を吐いた袮緒に問いかける。
少し頭を下げ、覗き込むように袮緒を見つめた。自分の顔が照れて赤くなるのを感じる。
いざ、両想いになると、なんだか照れ臭い。袮緒も、つられて顔を赤らめる。
「オレ……風邪、治ってなくて……」
あんまり無理は…と、喉を触りながら、困ったように俺を見る。
「コート着ないで出てったから…?」
顔を顰めて祢緒を見る。袮緒は、微かに声を詰まらせた。
「ごめん、な」
袮緒の頭を優しく撫ぜる。袮緒はゆるりと首を横に振った。
「須栗さんのせいじゃ、ないです。オレが勝手に勘違いしただけ……」
「勘違いさせた俺が悪い」
俺の言葉に袮緒はまた、ゆるりと首を振る。
「少しだけ……俺ん家……行っていい?」
抱きしめたかった。キス、したかった。
でも、こんな公衆の面前でそんなことは、できない。
俺の言葉に、袮緒は、ゆっくりと頷いた。
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