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笑っている方がいい
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こんなに幸せでいいのかな?
もう、ダメだと思っていたオレの恋。
須栗さんは、優しくオレを受け入れた。
大好きな人にしがみつく。
もう、この手を放したくない。ずっと、ずっと、抱きしめていたい……。
この幸せを逃がしたくない。
「どこにも、行かないで……」
ぼそりと呟いたオレの言葉に、須栗さんはくすくすと笑った。
「心配しなくても、俺、どこにも行かねぇよ……ってか、ここ、俺ん家だし」
須栗さんは、オレの腕を少し緩めると、くるりと腕の中で反転する。
玄関の段差で須栗さんとオレの身長差がほとんどなくなっていた。
須栗さんはオレの腰に手をまわし、コツンと額を重ねる。
「心配しなくても、俺は袮緒が大好きだから、お前の傍を離れたりしない。強がらなくていい、どんな袮緒でも俺は、全部、好き、だから……」
須栗さんの唇が、そっと近づく。
オレは慌てて、少し顔を引いた。
そんなオレの行動に、須栗さんは不安そうに眉を寄せる。
「すいませんっ。だって、風邪、うつったら困る……」
困り顔で須栗さんを見る。須栗さんは、ふっと鼻で笑った。
「ばーか」
オレの顔を両手で挟み、目を細め、唇を見つめたまま、ゆっくりと顔を近づける。
オレは思わず、目をギュッと瞑った。
――― ちゅっ。
それは凄く優しくて、唇が触れる程度の軽い、軽いキスだった。
「家まで来といて、キスまでお預けくらったら、俺、いじけるぞ?」
須栗さんは、また額をくっつけ、オレの頭をくしゃくしゃと撫ぜながら、ケラケラと笑った。
須栗さんの笑い声につられて、オレも笑い出す。
「やっぱり、笑っている方がいいな」
そう言って、須栗さんはギュッとオレを抱きしめた。
「もう、泣かせたりしないから……」
オレの耳元で須栗さんが呟いた。
もう、泣かないよ……あなたが傍にいてくれるのなら。
溢れる愛は、涙には、変わらないから。
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