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袮緒の切り札
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目を向けると、対面に座っている袮緒が、オレを見ていた。
一昨日、袮緒を須栗の車に押し込み、袮緒が話し始めたのをきっかけに、オレは先に帰宅した。
その日の22時頃、『とりあえずうまくいったから、ありがとうな』と、須栗からお礼の電話が入った。
次の日袮緒は、少しだけ目を腫らし、でも、何事もなかったかのように出社してきた。
その際、オレと飯田にお礼にご飯を奢りたいと言われ、今に至る。
きょとんとオレを見る袮緒の横で、飯田がオムライスを口いっぱいに頬張っていた。
「あぁ、ごめん、ごめん。……てか、飯田、詰め過ぎじゃない?」
オレがくすくす笑うと、飯田は口を閉じたまま、口角を上げる。頬袋をいっぱいにしたハムスターのような顔のまま、もぐもぐと噛み砕く。
ごくんっと口の中の物を飲み込み、飯田は喋り始める。
「早く食べて、袮緒にいろいろ聞きたいんでっ」
キラキラと瞳を輝かせオレにそう言うと、にやにやと袮緒を見やる。
「なんも話すことないよ」
袮緒はさらりと言葉を吐く。
飯田は、祢緒の言葉に、不満そうに口を尖らせ、ぶーっと音を鳴らす。
「2人には感謝してるけど……、本当になんもないよ」
袮緒は飯田を見もせずに、カレーライスを口に運ぶ。
「そんなことないでしょ? のろけでもいいよ?」
食い下がる飯田に、袮緒は、なんでお前にのろけなきゃなんないの、とため息と一瞥。
「じゃぁ、須栗に聞こうか?」
袮緒が嫌悪感いっぱいに、オレを見る。
飯田は期待感いっぱいに、オレを見る。
2人の表情があまりにも対照的で、オレは思わず声を立てて笑ってしまった。
「愛生さん、ほどほどにして下さい」
袮緒は、オレには切り札があるんですよ、と言わんばかりの怖い顔でオレを見ていた。
……そうだった。袮緒はオレが飯田を好きな事、知ってるんだっけ。
「飯田、明日のバスケ、来る?」
オレは思い切り、話題をすり替えた。急な話題の変更に飯田は、目を瞬く。
「はい。行きますけど……ってか袮緒、バスケしない?」
飯田の言葉に、今度は袮緒が目を瞬く。
「唯一さんに誘ってみろって言われてたのよ。でかいから?」
なぜか半疑問形で袮緒に問う。
袮緒は、眉根を寄せて飯田に一瞥をくれ、言葉を吐く。
「やらなくはないよ……でかいから、ね」
いなすような袮緒の言葉。飯田は全く意に介さない。
「じゃぁ、明日、行こうよ。ここ、奢らなくていいから、明日、来て?」
そっちの方がお礼になるから、と飯田は袮緒に、にやりと笑って見せた。
袮緒は、ため息を一つ吐き出し、諦め半分で、了承の意を示した。
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