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偏屈な奴
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「いいなぁ……」
急に飯田の呟く声が聞こえた。
須栗さんの横から、飯田がひょこっと顔を出す。渋い顔をするオレに、にやっと笑んで見せる。
「袮緒はあげないよ」
コイツは俺のもんだ、と須栗さんは、片方の口端だけを上げ、ニヤリと笑う。
須栗さんの言葉に、オレの心臓はドキドキと音を立てた。顔が、火照る…。
「いらないですよ。こんな偏屈な奴っ」
飯田は、いかにも嫌そうに肩を竦め、ぶるぶると首を振るう。
オレは眉間に皺を寄せ、飯田に一瞥をくれる。
偏屈って……。
「こう見えて、意外に素直だったりするよ」
俺と一緒の時だけな、っと、嬉しそうに言い、オレに、笑顔を向ける須栗さん。
飯田は、にまぁっと笑みを浮かべる。その顔には『のろけ、ごちそうさまですっ』て、書いてある……気がした。
「彼氏、いないの?」
須栗さんの質問に、飯田は、困り顔で笑い、言葉を発する。
「フリーなん……」
-ぱこんっ。
「こら、飯田。邪魔すんなっ」
後ろから追いついてきた愛生さんが、飯田の後頭部を叩き、そのまま、すたすたと歩き去る。
飯田は、歩き去っていった愛生さんの背中を見ながら、口を尖らせる。
「ああいうのは?」
須栗さんが愛生さんを親指でさしながら、飯田に問うた。
飯田は、質問の意図が掴めないというように、きょとんとした顔を須栗さんに向ける。
「あいつ、彼女いないよ?」
32歳にもなって彼女もいないって、ぼやいてたよ? と繋げる。
「いやー、ないですよ」
あ…愛生さん、フラれた……。
「彼女いなくても、私なんて相手にしてもらえないですよ」
そう言って、飯田はあははっと力なく笑う。
ん?
「飯田って愛生さんのコト、好きなのっ?」
オレのストレートな言葉に、飯田の顔は面白いぐらいに一瞬で、真っ赤に染まった。
あれ? この反応って飯田、愛生さんのこと好きだよね?
これって両想いなんじゃない?
同性同士でもあるまいし、なんの問題もなさそうなのに……なんでお互いに遠慮してるの?
……オレたちより、よっぽど面倒くさくない?
オレの口から笑い声が漏れた。
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