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オウム返し
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「そこ、笑うとこ?」
飯田は面白くなさそうに、口を尖らせる。
「いや、ごめん……なんでもない」
そうは言ってみても、オレの笑いは治まらない。
色々と言っていた愛生さんが、自分の恋愛になると、とんと見えてない感じが、オレの笑いのツボを刺激した。
オレは飯田とは逆の方向に顔を向け、くすくすと笑い続ける。
「本当、あんたはイラッとさせる天才だねっ」
飯田は、イラつくままに言葉を吐き、先を行く愛生さんの元へ走り去る。
「どうした?」
須栗さんも、急に笑い出したオレの行動を不思議がり、不安顔で覗き込む。
オレは笑い過ぎて涙が出た目を押さえながら、事情を説明しようと口を開く。
「いや……」
……愛生さんも飯田が好き。
その愛生さんの想いを、ここで須栗さんに伝えるのも、違う気がして言い淀んだ。
「須栗さん、バスケやらないですよね?」
須栗さんは手ぶらの状態だったので、たぶん、愛生さん達と見ているだけなのだろう。
オレの問いに、須栗さんはきょとんとしながらも、頷く。
「オレ、着替えに行かなきゃいけないんで、『黙っていたら伝わるもんも伝わらない』って愛生さんに伝えてもらえますか?」
オレから愛生さんへの伝言。
須栗さんの頭上には、たくさんの疑問符が浮かんだだけだった……。
着替えを済ませ、唯一さんや集まってきたバスケ仲間と準備運動。
オレは黒色のジャージの姿。上着の前を開け放ち、腰に手を当て、反り返る。
「お前、やっぱり細いなぁ」
腕のストレッチをしながら、オレの腰回りを視界に捉え、唯一さんがぼそりと呟く。
「細くても動けますよ。負けませんよ?」
目を細めて口端を上げ、ちらりと唯一さんに視線を送る。
急に唯一さんが、オレの頭をぱしんっと叩いた。
きょとんとしていると、唯一さんはオレの耳元に口を寄せる。
「その顔、俺には向けんな。誘ってるようにしか見えん」
こっち側だと思うからそう見えんのか? と呟き、ははっと笑う。
「誘ってませんよ」
フラットに言葉を吐き、嫌そうに、唯一さんに視線を送る。
「わかってるよ。……アイツ、いい奴だから、仲良くやれよ」
そう言って、唯一さんはオレを見て、にかっと笑った。
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