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スーツとジャージ
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靴を履きかえ、外へ出る。須栗さんの手は、自然とオレから離れていった。
もう少し、触れていたかったな…。
「楽しかったか?」
車まで歩きながら、須栗さんがオレに問うた。
「楽しかったですよ」
オレは、歩きながら、ぐっと背を伸ばす。久しぶりの運動に、少し身体が重く感じた。
「そっか。これから、どっか行くか?」
「オレ、ジャージですよ」
スーツ姿の須栗さんとジャージ姿のオレ。
あまりにも異質な組み合わせのような気がした。
「別にいいじゃん。俺、気になんないよ?」
ニヤッと笑いながらオレを見る。
「いや、……」
オレが気になる……。着替えてくれば良かったな……。
スマホを取りだし、画面を覗く。時間は20時を指していた。
「せっかくだから、飯ぐらい付き合えよ」
須栗さんは、拗ねたような声を出し、恨めしそうにオレを見る。
オレは、ため息交じりに返答する。
「わかりました……」
車にたどり着き、助手席の扉に手を掛ける。
「そんなにイヤか?」
須栗さんは、運転席の扉にかけた手を止め、オレに淋しげな瞳を向けた。
その視線が、俺と一緒に居たくないのか? と、オレに問う。
オレはゆっくりと、かぶりを振る。
「違いますよ。でも、ジャージとスーツじゃなんか……」
胸元の生地を少し引っ張り、ジャージに視線を落とす。
車の扉が開く音に視線を向けると、須栗さんはそのまま車に乗り込んだ。
オレも促されるように、車に乗り込む。
「着替えたら飯、付き合ってくれるか?」
オレの顔色を窺うように、須栗さんは首を捻る。
須栗さんと一緒に居たくないわけじゃない。
一緒に居たい。触れて、いたい。
「どこかでお弁当買って、家で食べませんか?」
オレの提案に、須栗さんは嬉しそうに、笑む。
須栗さんの手がオレの頭をくしゃっと撫ぜる。
「そうすっか」
須栗さんは、弁当屋……どこにあったかなぁ、と呟きながら、車をゆっくりと発進させた。
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