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誘いと中断
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須栗さんの手の、唇の、舌の動きに翻弄される。
もっと、もっと触れたくなる……。
から揚げ弁当を2つ持って、先を歩く須栗さん。
鍵を開け、オレを家の中へと促した。
ワンルームのマンションには、大きめのテレビと小さなテーブル、そして、セミダブルのベット。
小さなテーブルの上には、メンズファッション誌やリモコン類が乱雑に置かれていた。
須栗さんは、ファッション誌を床に下ろし、弁当を無造作にテーブルに乗せる。
「その辺、座ってろ」
テーブルを指し示し、オレに座るように言葉をかける。
オレは促されるまま、腰を下ろした。
須栗さんは、そのまま、キッチン横の冷蔵庫に向かう。大きなお茶のペットボトルとコップ2つを手にして戻ってきた。
腰を折り、コップやペットボトルをテーブルに置くと、テレビのリモコンをオレに差し出した。
「好きなの見ていいぞ?」
オレは、衝動的に須栗さんの顔に唇を近づける。
ずっと、そうしたかった。ずっと、触れたかった……。
掬い上げる様に須栗さんの唇に触れた。
離れて、見上げた須栗さんの顔は、優しくオレに微笑みかける。
須栗さんの両手が俺の頬を包み込む。今度は須栗さんの唇がオレに重なる。
ゆっくりと唇を味わうように、上唇を啄み、下唇を啄み、全体が重なる。
ゆるりと須栗さんの舌がオレの口内に入りこむ。オレの舌を絡め取るように、口の中を這い回る。
「んっ……はぁ…」
オレの口から、甘い吐息が漏れた。
不意に、苦い記憶が脳裏に蘇る。
口を塞がれ、息も体も心も苦しくなるセックス。
首の根を掴まれたように、顔がピクっと後ろに引き下がる。
変に力が入り、オレの身体が瞬間的に強張った。
急に逸れた唇に、須栗さんは、瞳を開け、オレを見る。
オレはもう一度、須栗さんの唇に触れるだけのキスをする。
「ごちそうさま……」
額を合わせ、囁き、唾液で濡れた自分の唇をゆるりと舐めた。
オレは、少し、怖くなる。
オレの声に幻滅されたら、どうしよう。
オレのセックスに幻滅されたら、どうしよう……。
「弁当……冷める前に食べませんか?」
オレは、キスの中止を、行為の中断を提案した。
額はつけたまま、視線だけを逃がす。
自分から誘ったのに……。
でも、ただ、苦しいだけのセックスはしたくない。
須栗さんに、嫌われたく……ない。
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