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海の写真
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オレはまた、須栗さんを不安にさせた。
須栗さんの前から、逃げ出そうとした。
嫌われることへの恐怖からセックスを拒み、自慰によりその恐怖がじわりと心を侵食した。
止められない恐怖が心を満たす前に、逃げ出そうと思った。
須栗さんはそんなオレの浅はかな行動を見破った。
途切れ途切れの疑問の言葉が、オレに真意を問いかける。
でも、オレは気持ちを言葉にはできなかった。
愛を確かめる行為が、オレに注がれる愛をぴたりと止めてしまう、かもしれない。
須栗さんはオレを嫌いになる、かもしれない。
そんな仮説が現実となるのが怖い。
黙っていたら伝わらない……。
わかってる。
でも、怖いんだ。
その言葉を口にするのさえ怖い。
止められない恐怖が涙となり頬を伝う。
『好き……だから、…』
好きだから、不安になる。
手に入れてしまったからこそ、失う恐怖が心を浸潤する……。
でも……。
どんなに苦しくても、あなたから逃げては、いけなかった。
須栗さんの気持ちから逃げたりしない。告白されたときに、そう誓った。
もう、逃げたりしない。苦しくても、切なくても、逃げたりしない。そう、決めたのに。
『……俺も、愛してるよ』
お願い。ずっと、好きでいて。オレのこと、嫌いにならないで……。
家に着き、アパートの階段を上がる。
オレの家は木造2階建て、総戸数6部屋、2Kのアパート。コの字型でオレの部屋は2階の左側。
部屋に入ると眼前に海が広がる。
入り口から見える位置に置かれたガラスのローテーブル。その上にコルクボートを立て掛け、須栗さんと行った海で撮った写真を何枚も貼りつけていた。
ローテーブルの前にぺたんと座り込む。じっと海の写真を眺める。
お願い、この不安な気持ちを、恐怖心を……攫っていって…。
もう、須栗さんにあんな顔、させたくないんだ……。
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