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「なんか、……無理してないか?」
須栗さんの顔は、また、悲しそうな色を浮かべた。
いつも余裕のない、怖がりなオレは、いつも知らぬ間に、須栗さんを不安にさせる。
「そんなこと、ないよ」
視線を眼下に広がる街中へ、海へと飛ばす。
なんでバレてしまうのだろう。
そんな顔、させたくないから、オレ、頑張ったのに。
大好きなのに、愛しているのに、オレの行動はいつも空回る。
大好きな人を知らぬ間に、傷つけて、しまう。
「なんで強がるんだよ……」
須栗さんはため息交じりに言葉を吐き出し、柵に背を向け寄りかかる。
オレは弱虫で、泣き虫で、臆病で……。
だから、怖い。須栗さんに嫌われるのが、怖いんだ。
須栗さんのコト、失いたくないんだ。嫌われたく、ないんだ。
須栗さんがオレを嫌いになったら、オレはあなたの傍にはいられない。あなたから離れるしかない。
だから今は、少しでも、須栗さんがオレを好きでいられるように……オレは強がるしかない。
オレの弱さに、臆病さに絶望されないように。
オレは須栗さんの顔を両手で挟み、自分に向けた。瞳を覗き込み、言葉を発する。
「無理してないよ。本当に」
そう言って、ニコリと笑って見せる。
余裕のふり、強いふり……。
オレはまだ、鬣を捨てられないんだ。
ごめんなさい、嫌わないで。
ごめんなさい、傍に、居させて……。
オレ、頑張るから。オレ、強くなるから。
あなたに嫌われてしまうかもしれない恐怖に負けないように頑張るから……。
もう少し、大好きなあなたの傍に居させて欲しいんだ……。
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