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本当の姿
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『無理してないよ。本当に』
そう言って、袮緒は俺の瞳を覗き込んだ。
でも俺には、今日の袮緒が、自然体だとは思えなかった。
わざと声を立てて笑って楽しげに見せてみたり、急にキスをしてきたり……そんな積極性が本当の姿だと言うのか?
俺の前で泣きながら告白し、抱きつき『どこにも、行かないで……』と淋しげに囁いた祢緒は、飾り物だったのか?
-コンコンっ。
コンソールボックスを叩く音に視線を向けた。
運転している袮緒の手が俺を呼ぶように、くいっと動く。
袮緒に瞳を向けると、前を向いたまま、ちらりと俺に視線を送り、にこりと笑って見せた。
……オレの思い違い? この強引さが袮緒の本当の姿なのか?
袮緒には、もっと大人しくてついてくるタイプの方が合うんだろうか……。
……やっぱり俺と袮緒とじゃ釣り合いが取れないのか?
沈殿していたわだかまりが、ふわりと舞い上がり、俺の頭を浮遊する。
宇野のように可愛くて、宇野のように一歩後ろからついてくるような……。
「手……貸してくれないんですか?」
混沌とする俺の思考を、淋しそうな袮緒の声が遮断した。
すっと引きそうになる袮緒の手を、慌てて捕まえる。
「ははっ……ありがとう」
そう言って、祢緒は、いつも俺がやるように手を愛で始めた。
どっちが本物の袮緒なんだ?
俺が手を求めたら、照れながらもされるがままになっている袮緒。
自分から求め、照れる様子もなく、どうどうと俺の手を愛でる袮緒。
無理をしていると思っていたのは、俺の思い違いなのか?
お前を楽にしてやりたいと思った気持ちは、単なる俺の奢りなのか?
どっちが本当のお前の姿なんだ…?
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