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苛立ちに変わる
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家に着き、鍵を開ける。
靴を脱ぎ、玄関を上がるタイミングで、背中に扉の閉まる音を聞く。
急に、袮緒の腕が腰に回り、後ろにぐいっと抱き寄せられた。袮緒の顔が肩に埋まる。
「袮緒?」
「ちょっとだけ。お願い……」
さっきまで積極的だった袮緒が、急に、鳴りを潜める。
…本当、わかんねぇっ。
俺は腰に回された袮緒の腕をぐっと引き剥がした。
振り返り、袮緒に視線を合わせる。
「袮緒? お前、何、考えてんだ?」
眉間に皺を寄せ、袮緒に問いかけた。
積極的な部分を見せてみたり、急に淋しげに縋りついたり。
俺は袮緒が何を考えているか見当がつかなかった。
掴みどころのない袮緒の行動に、苛立ちを覚え始める。
袮緒は黙って、淋しげな瞳で俺を見つめていた。
両手で袮緒の頬をやんわりと包み、じっと瞳を見据える。
「俺、わかんねぇんだよ。急に積極的になったり、急に甘えだしたり……」
袮緒の視線がするりと逃げる。
祢緒は、本心を探られたくないとき、強がって見せる時に、俺から視線を外す。
そんな祢緒の仕草に苛立ちが増した。
「……お前のここにいるの、俺じゃないんじゃないのか?」
片手を頬から離し、袮緒の胸を人差し指でトントンっと叩く。
全くタイプの違う俺と宇野の存在。
俺と付き合ってみたら、思ったのと違ったのか?
袮緒は無理をして俺と付き合っているのか?
不安が不審を呼び、苛立ちが加速する。
袮緒はその言葉に、動作に怪訝な瞳を俺に向ける。
「もし、今日の積極的な袮緒が本当の袮緒だっていうなら、俺よりもっと小さくて、可愛くて、一歩引いてついてくるようなヤツの方がお前にあってるんじゃないのか?」
宇野みたいな奴の方がいいんじゃないのか? と、吐き捨てるように嫌味な言葉を口にした。
「違う……宇野さんのコト、本当にもう好きじゃないっ」
袮緒の微かに潤んだ瞳が俺を見る。
「でも、お前なんか無理してるよな?」
袮緒の瞳がまた、俺からするりと逃げる。
祢緒の視線は、無理をしていることを肯定した。
「なんでだよ…なんで、ここで……」
ここで視線を外されたら、俺はどうしたらいい?
お前はやっぱり俺に本当の自分を曝け出せないってことか?
俺と付き合うことに無理や強がりが必要だってことなのか?
俺はゆっくりと袮緒の頬から手を離す。
「俺のこと……好きじゃねぇのかよ……」
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