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どうしたら伝わる?
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俺に『恋をしている』と言った袮緒。
宇野への想いは『憧れ』だと言い、俺への想いは『恋』だと言った……。
ごめん、袮緒。
お前の気持ちを疑うような言葉を吐いて、ごめん。
でも、謝る必要はない。
俺だって、お前に『恋』をしている。
お前の傍に居たいと、思っているんだよ……。
ため息が漏れた。伝わらない想いが、ため息と化した。
「俺、言ったよな? 俺は、お前が好きだって何度も言ったよな?」
囁く俺の問いかけに、袮緒は、俯いたままで、顔を上げようとはしなかった。
「なぁ袮緒……無理しないと俺と一緒に居れないのか?」
俺の切ない声にも袮緒は、言葉を紡がない。顔を上げない。
ただ、微かに肩を揺らし、ズッと鼻を啜る音を立てる。
「強がらなくていい、どんな袮緒でも俺は、全部、好きって言ったよな? 俺は傍に居るって……言ったよな?」
祢緒はやっと、俺の言葉に押し出されるように口を開いた。
「だけど……、オレ、…こんな臆病なオレじゃ…」
……何も、伝わっていない。
俺がどんなに袮緒のことを愛しているか。お前のことをどんなに大切に想っているか。
無理をさせたい訳じゃない。
楽にしてやりたいと、肩肘張らずに素のままで、俺の傍で笑っていて欲しい、それだけだけなのに。
臆病だろうと、弱虫だろうと、泣き虫であろうと…俺は、お前のことが好きなのに。
袮緒の顔にかかる手を引き剥がし、顎をくいっと持ち上げ、視線をぶつける。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった袮緒の顔を見つめた。
袮緒は、気まずそうに視線を逸らす。
「俺は、どんな袮緒でも好きなんだっ」
伝わらない想いに、声が荒んだ。
祢緒の瞳の中で、涙が揺れる。
「お前は臆病で弱虫で泣き虫な自分が嫌いなんだろ? でも、俺は、そんな袮緒も好きなの」
袮緒の瞳から涙が零れ落ちる。
お前が弱い自分が嫌いでも、俺はそんな袮緒でも、どんな袮緒でも好きなんだ。
「わかるか? こんなぐっちゃぐちゃの顔でも、臆病でも、泣き虫でも、弱虫でも…」
言葉が徐々に勢いを失った。
袮緒の瞳から、ボロボロと落ちる涙に、心がズキズキと悲鳴に似た声を上げていた。
……俺、また、袮緒を泣かせた。
その思いが、俺の言葉を止めた。
もう泣かせない、そう、思っていたのに。
どうしたら伝わる? どうしたら、わかってくれるんだ?
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