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旅立ち
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眞人は、それから四日後、日本を旅立った。
空港に家族の見送りは一切なく、私も行くかどうか迷ったが、
休日の女中たちにしつこく誘われ、結局見送りに同行した。
眞人は、笑顔だった。
頬に大きな絆創膏を貼って、密かにバイトで溜めていたというわずかばかりの資金を持って。
何もかもを捨てて、眞人は晴れやかな顔で手を振って出国ゲートをくぐっていった。
最後に一瞬、私のほうを見て、申し訳なさそうな目をしたことを、私は今でも忘れられない。
今にも、駆け寄って、引き止めて、誰も私たちを知らないどこか遠くへ連れていってしまいたかった。
その唇を塞いで、強く強く抱きしめて、
兄弟だとか、男同士だとか、跡取りだとか、
そういった煩わしいしがらみから何もかも解き放たれて、二人で生きて行けたなら。
その自由な翼を手折って、俺の傍らでずっと、生きてくれたなら…。
女中たちが名残惜しそうに小さくなっていく飛行機を眺めている間、私は空港のトイレに駆け込み、
最後に見た眞人の切なげな目を思い出し、一人、自分を慰めた。
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