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取材
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眞人は、それから一度も連絡をよこさなかった。
女中の噂話によると、父親に縁を切られ、今後一切連絡をよこすなと言われたらしい。
インターネットも携帯電話もないその頃の私にとって、国外での兄の様子を知られる術は、何一つなかった。
高校へ上がり、初めて彼女というものができた。
一目惚れで、少しの間だけでも付き合って欲しいというから、少しだけならいいと言った。
女に興味がなかったわけでもないし、初めての彼女はそれなりに可愛かった。
しかし、彼女を抱いても、眞人を抱いた時のような興奮は得られなかった。
結局、無愛想な私に彼女も飽きて、一週間足らずで交際を終えた。
それからも、言い寄られた女とは必ず付き合った。
どの子と付き合っても、その柔らかで弱々しい身体に、どこか眞人を重ねて見てしまう。
堅い男の体とは全く違うはずなのに、あの三日間の眞人の幻が、ずっと脳裏に焼き付いて離れなかった。
高二になると、テレビ取材が稽古場に入るようになり、気が散ることが多くなっていた。
なんでも地元の若者応援とかいう地元番組の小さなコーナーで、初めてテレビに映ったことがきっかけらしい。
明らかに歌舞伎に興味のない若い女が学校の入り口で待ち構えていることも多くなり、全国放送での取材も増えてきた。
父は稽古に障るぐらいならいくらか取材を断れというが、私はがんとしてあらゆる取材を受け入れた。
――もしかしたら、どこかで眞人の目に留まるかもしれない。
心のどこかで、そんな思いがあったのは確かだ。
しかしあまりに無愛想な私の受け答えに苦情が来ることも多くなり、
まるでアイドルのような扱いで学校に押し寄せてきていた女たちも、素性を知って離れていったり、
ある時はストーカーや、犯罪まがいの行動をとる者も現れるようになった。
ある程度メディアや世間を味方につけなければ、一族を背負っていくことはできないと父は言う。
確かに、一挙手一投足を揚げ足取りのようにメディアに取り上げられる名門を背負う父としては、
跡取りの私がこの程度で音を上げるなど許せなかったのだろう。
自分で受けると言った手前、父の言葉に甘えて断ることもできなくなった。
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