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事故
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眞人からの連絡が再び途絶えたまま、私は高校を卒業し、大学に進んでいた。
学業は一区切りしたと思っていたが、今時大学は出ておかなければという世間体にうちも漏れることなく、
ほぼ稽古の合間に昼寝に行くような、名ばかりの大学生だったが、それなりに大学生活を満喫していた。
そんな時、家に、一本の国際電話が入った。
大学に行っていた私には、門下生がタクシーを飛ばして知らせに来てくれた。
眞人が、舞台の練習中、誤って大怪我を負った。
その知らせを聞いて、兄を勘当したはずの父は、血相を変えて飛行機に飛び乗ったという。
私も後を追うと言ったが、お父様が行ってくださいましたから、と頑として止められてしまった。
きっと、幹久を行かせるなとでも言われていたのだろう。
確かに、一家の主人と跡取りが揃って姿を消したら、妙に思われるに違いない。
ただでさえ一時期騒がれた経験があるだけに、眞人が帰ってくるかもしれない家に、あんなうるさい連中が群がるのは御免だった。
父から連絡があったのは、その二日後だった。
容体は、お怪我の様子は、と母親のように電話に食いつく古馴染みの女中に、父はただ一言、三週間後に帰る、と言っただけだった。
しかし眞人を残し、父は翌々日、帰ってきた。
きっと眞人に帰れと言いくるめられたのだろう。
父は憔悴しきっていたが、少なくとも、眞人は生きているということだけはわかった。
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