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愛の形
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柔らかな髪に触れ、そのぬくもりに愛しさが込み上げる。
「眞人…眞人。私は…妻を、柚子を、子供達を愛してる。だが…それと同じほど、今もお前を愛してる」
「僕もだ…幹久。有紀子さんを、結威を、心から愛している。幹久…君のことも、これからもずっと、愛しているよ」
眞人がそっと私の頰に触れる。
頰に熱いものが伝い、静かに落ちた。
「全く…欲張りな兄弟だな、私たちは」
「あぁ、本当だ」
私が笑い、眞人も笑う。
私の思いを、ついに受け入れてくれた、愛しい愛しい、不器用な我が兄。
そっと眼鏡を外し、時を刻んだ目尻を撫でた。
「愛してる。ずっと…ずっと」
ずいぶんと、時間がかかってしまった。
だけど、今、こうして二人で居ると、今まで感じた身の裂けるような悲しみも苦しみも、どれも無駄ではなかったように思えてくる。
戯れのように軽く唇を重ねると、まるで初心のように震えていて、お互いにふっと笑ってしまった。
「眞人。この後、飲みに行かないか。…まだ、向こうに居た頃の話を聞いていない」
「もちろん。明日は仕事がないから、ゆっくり話せるよ。聞いて…くれるのか?」
「聞かせてくれ。…有紀子さんとの出会いも、気になるしな」
「ははっ。それなんだけどな、ほんと頭が上がらないよ。あの人は僕の女神なんだ…」
私は立ち上がり、眞人の車椅子を押して歩き出す。
足と一緒に動かなくなったはずの眞人の翼は、気付けば今も私を暖かく包み込んでいた。
愛しい翼に、私は願う。
息子たちが、私たちのように遠回りをすることがないよう。
そしていつか、苦難も悲しみも乗り越え、こうして笑い合える日が来るように。
「眞人」
「何だ?」
「大好きだ」
「僕も」
To be continued.
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