アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
5
-
一月に一、二度の彼からの連絡を祈る様に待った。一月、彼からの連絡がない事もあった。それでも、会えた日には必ず抱いてくれたし、一年も経つと、少し会話もしてくれるようになった。会話といっても、彼の質問に答えたり、相槌を返すだけで、その間に服を身に着けた彼は、さっさと帰ってしまう。彼が不快な気分にならない様に、態度にも、言葉にも、最新の注意を払っていた。
半年程前、彼の機嫌がとても悪い日があった。連絡を受け、すぐに抱いて貰える様、彼に教わった通りに準備をして、そわそわと彼を待っていた。インターホンが鳴り、急いで玄関のドアを開けると、また、あの時の様な冷たい目をした彼が、静かに立っていた。戸惑う僕を無視して玄関に上がると、僕を睨みつけた。
怖くて、何も言えない僕に彼が言った。
「お前、昨晩何処に居た?」
「え?」
「答えろ!」
お前、と初めて言われた。強い口調で責められ、体が固まったように動かない。
「言えないのか?まあいい、来い。」
どうして怒っているのか、どうしてそんな事を聞いたのか何も分からないまま、怒りをぶつける様に、彼は僕を酷く抱いた。後始末をする気にもなれず、汚れた体のままベッドに横たわる。その日、無言で立ち上がる彼の左手には、いつもあるはずの結婚指輪がなかった。
彼から連絡はない。知らない間にきっと、彼に不快な思いをさせてしまったのだ。せっかく抱いて貰えていたのに、自分を責めた。あんなに彼を怒らせてしまったのだから、彼からはもう連絡はないだろうと、携帯握り締めながら泣いた。
気を紛らすために、就職先は決まっていたけれど、勉強に励み、バイトのシフトを詰め込んだ。そんな僕を、友人達は心配してくれた。彼と出会い、少しでも彼に自分をよく見せたいと、髪を切り、服を買い、自分を変えた。彼は何も言ってはくれなかったが、その結果、一人、また一人と少しずつ友人が出来、今ではバイト先や、大学でも一人ではなくなった。話し掛けやすい雰囲気に変わったと、彼に好かれたくてやった事だったのが、初めて、友達と呼べる人達が出来た。
「そういえば、来月、お前誕生日だろう?今月でここのバイトも、俺達辞めちゃうしさ、最後に皆でお前の誕生日祝いつつ、ぱーっと飲もうぜ。卒業して社会人になったら、めったに会えなくなるしさ。」
バイトも終わり控室で着替え始めると、横に居た同じ大学に通う友人言った。皆が、お祝いしようと騒ぎ出す。僕の誕生日はついでなのかもしれないが、それでも嬉しくてありがとうと言った。予定がまだ先で分からないから、近くなってからまだ詳しく話そうと、そこで話は終わった。沈んでいた気持ちが浮上する。
ああ、僕はまだ頑張れる、最後にもう一度、勇気を出そう
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
5 / 17