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朝起きて、カレンダーを確認する。今日は僕の誕生日であり、約束の日だ。朝から、携帯電話には、誕生日おめでとう、というメールが友人達から届いていた。僕のお祝いは後日行ってくれるらしい。良い友人達に囲まれ、僕は本当に幸せだ。卒業式を終え、皆、もうすぐ社会人になる。今まで通りには会えないけれど、また会おうと話をした。
部屋を見渡す。後は、要らない家具やごみを処分し、荷物を出すだけだ。この部屋に来たのは、彼だけだった。僕は明日、この部屋を出て、この街を離れる。あえて遠い会社を探し、何社目かで早い内に内定を貰う事が出来た。少しずつ荷物をまとめていき、その間に彼に会う事ももあったけれど、彼には何も言わなかった。
掃除などしていると、お昼を過ぎていた。自分で買うのは、少し気恥ずかしい気もするけれど、ケーキを買いに行く事にした。彼から連絡があるのは夜だから、今から行けば十分間に合う。一緒に居てくれるのだから、最後にケーキも一緒に食べてくれるかもしれない。そういえば、一緒に食事した事もなかったなと気付く。甘いものが苦手だといけないから、甘さが控えめなものを選び、それを二つ買った。
大きなショッピングモールには、土曜日ということもあり、たくさんの人がいた。適当に店を見て回りながら歩くと、雑貨の店があった。好きなデザインのマグカップを見つけ、手に取る。
その時、少し奥の棚の商品を見ているカップルがいるのを見つけた。男性はこちらに背を向けている為見えないが、女性は綺麗な笑顔を浮かべ、商品を手に取っては男性に見せ、楽しそうに何か話している。男性は背が高く、雰囲気や背格好が彼によく似ていると思った。
男性が、少し顔を横に向けた。声が漏れそうになるのを、ぐっと堪え、顔を背けた。手にしていたマグカップを落とさないよう両手で支え、そっと置く。そして僕は、走り出した。
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