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「受け入れられなくて、ずっと、君の部屋の前に居た。もう居ないと分かっていても離れられなくて、繋がらないアドレスにメールを送り続けていたら、夜が明けていた。」
僕達を繋いでいたのは、メールアドレスだけだ。そのアドレスも家を出る時に変えた。お互いの事は何も知らない。本当は知りたかった、ただ知ろうとすれば知りたくない事も知る事になる。彼が結婚しているという事を、僕は見ないふりをしていたかった。本当に、勝手だった。
「その後、どうやって家に帰ったのか覚えていない。それでもいつも通り会社に行った。仕事を終えて、気付けば君のアパートの前に居た。そして決めた。君を捜そうと。君がもう俺を好きじゃなくても、冷たくされても、縋りついてでも君の傍に居たかった。」
「昨晩、君を捜しながら、いつも通り俺は君のアパートへ向かっていた。もう習慣みたいなもので、居ないと判っていても行かずにはいられなかった。その途中、バーの前に人影が見えて、すぐに君だと分かったのに体が動かなかった。人間、驚き過ぎると本当に何も出来なくなるんだな。君が歩き出した事で、慌てて君の腕を掴んだ。やっと君を見つけた嬉しさで、いい歳して号泣しそうになったよ。」
彼が愛しい。まだ僕を抱き締める彼の顔を見つめる。この気持ちを彼に伝えたくて、彼の唇に、唇を重ねた。
「君に散々言い訳ばかり聞かせてしまったけれど、君を取り戻したくて必死なんだ。俺を責めてくれていい。君に泣き言も言わせなかった。」
「本当にあの二年間、僕は幸せだったんです。貴方が、好きです。今までも、これからも、ずっと、ずっと大好きです。…愛しています。」
これが最後ではない。彼が許してくれるのなら、毎日だって彼に言いたい。
「これからは、ずっと一緒にいよう。愛している。」
再会してから、彼は何度僕に思いを伝えてくれただろう。
吐き出せなかった思いも泣いていた心も、彼が全て抱き締めてくれた。
随分、話込んでいたようで、カーテンの隙間から微かに光が漏れている。
あの日の、一人で迎えた夜明けを思い出す。
彼に抱き締められ、迎える朝はこんなにも幸せで、僕は、彼の胸に顔を埋めて、また少し泣いてしまった。
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