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カフェラテを一口飲みながら、気付かれないようにミヤくんにそっと視線を向ける。
ちょうど、女性客に声をかけられ、馴れた様子で笑顔を作りサラリとかわしているところだった。
あれだけ人目を引くのだから、きっとああいう誘いも多いのだろう。
可愛い女の子ですら、全く相手にされていないのだ。
男の僕なんて、言わずもがな、である。
無意識のうちに、ふぅっと重い息を吐き出す。
甘い筈のカフェラテが、今度はやけに苦く感じた。
「大丈夫ですか?」
聞き慣れた声が、聞き慣れない単語で問い掛けてきた。
ふと顔を上げると、そこにはミヤくんがいた。
いつの間にか、険しい顔になってしまっていたらしい。
再び慌てて笑顔を作り、彼に応える。
「すみません、ちょっと考え事をしてて。
大丈夫です」
そう取り繕うと、彼も笑顔を返してくれた。
「良かったです。
いつも優しい顔で飲んでるのに、今日は険しい顔だったから。
オーダー、間違ったかと思いました」
ヘラっと笑った彼の表情は、いつもの営業用とはなんだか少し違って見えて。
きっと、ただの気のせいなのに、ほんの少しだけ素の彼を垣間見れた気分になって。
胸がドキンと脈打った。
あれ…?
「“いつも”って…」
ふと、ミヤくんの台詞を反芻する。
いつも、見られていたのだろうか?
「毎週、来てくださってますよね?
おれ、何回かお客様のオーダー、取らせていただいてるので。
いつも、幸せそうに食べてくださいますし」
サラリと言われて、顔から火が出るんじゃないかってほど、慌ててしまう。
男一人の客なんて、珍しいんだから、目立ってしまっていたのだろう。
それでも、まさか見られていたなんて。
顔だけでなく、きっと耳や首まで真っ赤になってる。
「あ…えっと…はい。
…すみません…」
何に対して“すみません”なのかは、自分でもわからない。
ただ、なんだかいたたまれなくなって、そう呟くと、ミヤくんが可笑しそうに笑った。
「今の会話、謝るところありました?」
その言葉に、余計に恥ずかしさが増して。
穴があったら入りたいって言葉を、こんなところで体感するはめになるとは。
「すみませ~ん」
ちょうど良く、斜め向かいの席の女性客が、ミヤくんに声を掛ける。
「すみません、お邪魔しちゃって。
ごゆっくりどうぞ」
ミヤくんは軽く会釈をすると、女性客の対応に向かう。
ホッとしたような、残念なような…。
なんだか複雑な気分で束の間の時を過ごし、店を後にする。
残念ながら会計は別のスタッフだったが、去り際に接客中のミヤくんがこちらにペコリと会釈をしてくれて。
結局いつも以上に幸せな気分を貰って、帰路に着いた。
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