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それから暫くは、ただただ時間に流されて過ごした。
カフェに行くことは勿論、偶然ミヤくんに会うことも怖くて、あまり出歩かなくなった。
まあ、元々出不精な方だから、元の生活に戻っただけなんだけど。
それでも、生活に張りがないというか、どこか満たされない気持ちで、日々は過ぎていった。
しかし、何の因果だろう。
珍しく同僚と飲みに行った席で、彼と会ってしまうなんて。
フラつく足で会計を終えて、泥酔に近い状態の同期を後輩に押し付けて。
ギリギリ終電に間に合うかと店を出ると、またしてもミヤくんが、居た。
ドクンと、心臓が跳ねる。
運が良いと言うべきか、悪いと言うべきか。
ちょうどその店に入る様子だったミヤくんは、既にアルコールが入っているらしく、少し赤らんだ顔をしていた。
そして何を思ったか、友人らしき面々に軽く手を振ると、僕に向かってきた。
「こんばんは、またお会いしましたね」
屈託なく笑う顔は、僕の思いを知らないからこそのもので。
心臓が締め付けられるようにぎゅうっと痛むと、酔いのせいもあってか、ボタボタと涙が零れた。
「え…!?
ちょっ…! どうしたんですか?」
彼が慌てるのも、無理はない。
だって、ただのバイト先の客が、外で会ったら酔っぱらってて、急に泣き出したのだから。
けれども、それはもう僕の意思では止められなくて。
「ごめ…ん、何でもない……大丈夫だから…」
嗚咽混じりに何とかそれだけ言葉を絞り出して、その場を去ろうとした。
が…。
「どうみても大丈夫じゃないですよ」
ミヤくんに腕を掴まれ、引き留められる。
掴まれた腕が、熱を持つ。
そしてその熱が、全身の血液を沸騰させる。
頼むから、優しくしないで。
こんな穢い僕に、触らないで。
綺麗な君まで、汚れてしまうから。
「ホントに…大丈夫…だから、放っておいて…」
けれども、その手を強引にでも振り払えなかったのは、あるはずのない望みに、すがりたかったからだろうか。
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