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ミヤくんは、いつごろメモに気付いてくれるだろうか。
もしかしたら、封筒ごと鞄とかにしまって、数日間気付かないかもしれない。
一応、中を見てとは伝えたけど、律儀にすぐ見る義務なんて、彼にはないんだし。
メモに気付いても、わざわざ僕に会いに来てくれたりしないかもしれない。
それでも、僅かな望みをかけて、僕は駅構内のチェーンのコーヒーショップの窓際の席に陣取った。
バイトは昼過ぎまでと言っていたから、いくら早くても2時は過ぎるだろう。
そう思って、ケータイをマナーモードにしてアラームをセットし、寝不足の頭を腕に預ける。
コーヒーを飲んでいるとはいえ、昨夜から一睡もしていなかったせいで、つい、うつらうつらしてしまったようだ。
「お客様…」
そんな声にハッと顔をあげる。
コーヒー一杯で席を占領されては、お店にも迷惑だ。
慌てて何か追加しようとすると、そこには、何故か店員の姿はなくて。
息を切らながらも、ヘラっと笑ったミヤくんがいた。
「ふぇ…? あれ? 何で?」
テーブルの上のケータイを確認すると、アラームのお知らせ画面が見えた。
寝不足のせいで、アラームのバイブに気付かなかったらしい。
突然の到着にあたふたとすると、ミヤくんが笑いながら「ひでぇ」って嘯いて。
僕の向かいに座って、店員を呼んでブレンドを頼む。
「将吾さん待たせたら悪いかと思って、走ってきたのに。
やっと見つけたと思ったら寝てるんですもん。
しかも自分で呼んでおいて「何で?」って。
てか、俺がメモに気付かなかったら、どうするつもりだったんですか?」
ミヤくんの台詞は責める内容なのに、口調はなんだか楽しそうで。
ああ、やっぱり好きだなぁとしみじみ思う。
「しょーうーごーさ~ん?
聞いてます!?」
目の前で手を振られて、我に帰る。
「あ、うん、ごめん。
あんまり早かったから、ビックリして」
しどろもどろで答えると、ミヤくんはまた笑った。
「で? “伝えたいこと”って、何ですか?」
コーヒーに口を付けたミヤくんに、早速問い掛けられる。
そうだよね、わざわざ来てもらって、これ以上時間を取らせるわけにはいかない。
「あ、うん、えっと、あのね」
何を話すか一晩中考えたのに、いざ話そうとすると頭は真っ白で。
深呼吸して落ち着こうとすると、ミヤくんが再び口を開いた。
「すみません、急かしたつもりじゃなくて。
今日は夕方からの家教のバイトまで暇なんで、ゆっくりでいいですよ。
ここでは話し辛かったら、どっか移動しますか?」
優しく気遣われて、また心が痛む。
あー、でも、許されるのならば、もう少しだけ、彼と話をしていたいな。
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