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まさかこんな奇跡が起こるだなんて。
本当に夢じゃないんだろうか。
現実味の無い心地で、帰宅する。
子供みたいにベッドへダイブして、ジタバタと手足を動かして。
“嫌いじゃない”
彼の言葉を反芻すれば、自然と顔は綻ぶ。
「本当の本当に夢じゃないんだよね…?」
ふとそんな不安がよぎり、ポツリと呟く。
時代遅れの漫画のように自分の頬をつねるが、確かに痛みを感じる。
夢じゃ、ない。
あの後、次のバイトに向かうミヤくんと別れて、フワフワした気持ちで帰路に着いた。
別れ際、「連絡先交換しましょう?」ってミヤくんから言ってくれて。
まさか彼の方からそんなこと言ってくれるとは思わなかったから、携帯を操作する指が震えて、上手くクリック出来なくて。
そしたら、「慌てなくていいですよ。まだ時間に余裕あるから」って静かに微笑んで、落ち着かせてくれた。
笑うと年相応なのに、こう言う時は本当に大人の余裕みたいなものがあって。
格好良いと思う反面、女性との付き合いに慣れているのだろうと思うと、チクリと胸が小さく痛んだ。
どうにか息を整えて、震えた指先を落ち着かせ、赤外線の画面を開く。
登録するときに名前を聞いたら、「あれ? 言ってなかったっけ?」って素で驚くから、思い切り笑ってしまった。
「すっげー普通に“ミヤくん”って呼ぶから、知ってると思ってました」
そう言って、彼は名前を教えてくれた。
「じゃあ、改めまして、“もとみや やなぎ”です。
本棚の“本”に、宮参りの“宮”、やなぎは普通の植物の“柳”ね」
変わった名前でしょって笑いながら説明してくれた。
本宮柳くん、か。
残念ながら、僕の予想してた名前は全て外れていたけれど。
彼に名前を教えてもらえる日が来るなんて思ってもなかったから、とにかく嬉しくて。
「本宮、柳、くん」
一人ベッドの上で呟けば、それだけで自分の唇が驚くほど熱を持って甘く痺れる。
“将吾さん”そう呼んでくれる彼の声を思い出しながら、もう一度「本宮くん」と呟いて。
あまりの恥ずかしさに、耳まで真っ赤であろう顔を枕に埋めた。
たとえこの思いが叶わなかったとしても。
それでも…。
もしも、本宮くんが今だけでも僕の側に居てくれるのならば、もう少しだけ夢を見ていても、いいだろうか。
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