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冷静を装いつつ、小走りでカフェに向かう。
お店の入り口に着いたときには本宮くんはもう店内に入ってしまっていたが、会計を終えたお客さんを見送るときに、タタッとこちらに来てくれて。
「ごめんなさい、今空いた席片付けますから、もう少し待っててもらえますか?」
精悍な顔立ちの本宮くんが、ちょっと情けなく眉を下げる。
それがなんだかすごく可愛い。
待てをしている大型犬みたい。
「ううん、僕が早く来すぎただけだから、大丈夫だよ」
そう答えて微笑むと、満面の笑みで頷いてくれて。
店内に戻っていく後ろ姿には、はち切れんばかりにブンブンと尻尾を振る幻が見えた。
暫く待たなきゃいけないかと思ったけど、ホントにすぐに声をかけられて。
「お待たせしました」
ヘラっと笑って僕を案内してくれたのは、勿論本宮くん。
今から一緒に食事だから、メニューも見ずにカフェラテだけを注文する。
『あ、後から呼べば、もう一回来てもらえたのに…』なんてちょっとだけ思ったけど、それは流石に迷惑だろう。
運ばれてきたカフェラテを飲みながら、大人しく待つ。
その間も、勿論本宮くんはオーダーを取ったり会計をしたりと、店内を動き回っていて。
とても忙しいはずなのに、たまにこちらを見てへらりと笑ってくれる。
きっと、こう言うのに慣れてるだけなんだろうけど、不慣れな僕にとってはスゴく恥ずかしいような嬉しいような複雑な気分で。
結構早く来すぎたはずなのに、そんなふうに店内を行き来する本宮くんを見ていたら、あっと言うに時間は過ぎていった。
ピークを過ぎたとは言え、この時間にしてはいつもよりは多少混雑していたらしい。
予定のシフトよりも30分程遅れてバイトを終えた本宮くんが、ぱたぱたと小走りで来てくれて。
「将吾さん、すみません。
待たせちゃって」
また眉尻を下げて、パンッと目の前で手を合わせる。
長身を屈めて、それでも僕より目線は高いのに、上目遣いで見つめてくる様子は、やっぱり大型犬みたいで。
今度は、垂れ下がった尻尾の幻が見えた。
「ううん、バイトお疲れさま。
こっちこそ、ごめんね。
バイト上がりで疲れてるのに」
きっと、先週泣いてしまった僕に気を使って誘ってくれたのだろうと思ってそう返すと、意外な答えが返ってきた。
「平気ですよ。
将吾さんって癒しオーラ出てるから」
“癒し”なんて、初めて言われた。
普段は、僕のイメージって“地味”とか“陰が薄い”とかばっかりだから。
クスクスと嬉しそうに笑う本宮くんが、ちょっと憎らしい。
なんでこんなにも、彼は僕の気持ちをグッと掴んでくるのか。
やっぱり、この気持ちを諦めるのは、もう少し先になりそうだ。
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