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「風間くん、なんか良いことでもあった?」
休み明けの月曜日。
デスクでPCに向かっていると、突然背後から声をかけられる。
「ふぇっ…!?」
驚いて振り向くと、桐島さんが爽やかに笑っていた。
「ごめんごめん。
驚かせるつもりは無かったんだけど。
風間くん、パソコンに向かって幸せそうな顔してるからさ。
まさか、伝票整理がそんなに楽しい訳じゃないでしょ?」
そう言われて思い付くのは、勿論本宮くんのことしかない。
初めて食事に行ってから数ヵ月。
本宮くんは今でも週に最低一度はメールをくれるし、月に2~3度はバイトの合間に会ってくれる。
彼が何を思ってこんな僕なんかを構い続けてくれるのかはわからないけれど、今の僕にはそれだけで十分すぎるほどに幸せだった。
「ぇ…ぁ…えっと…」
普通に仕事をしてたつもりだったけど、そんなに顔に出ていたなんて。
何て答えて良いかわからずに、どもってしまう。
「週末に何か、いいことでもあった?」
桐島さんがクスクスと笑いながら、消耗品リストを差し出してくる。
「ぁ…いえ…あの…」
図星を指されて、よりいっそう吃りは激しくなる。
確かに一昨日の土曜日は、本宮くんとご飯を食べに行った。
ちょっと時間がなくて近くのファミレスに行ったんだけど、それもなんか気取ってない感じが嬉しくて。
「また連絡しますね」って本宮くんの言葉を反芻するだけで、幸せが溢れ出してくる。
「風間く~ん、戻っておいで~」
またしても、本宮くんを思い出してトリップしていたらしい。
桐島さんに顔を覗き込まれて、ハッと我に帰る。
「っ…! すみません…」
ホント、桐島さんって顔が整いすぎてて。
流石に普通にしゃべるのは慣れたけど、近すぎると緊張するから、あんまり覗き込まないでほしい。
勿論、桐島さんに恋愛感情はわかないんだけど、それでも恥ずかしいものは恥ずかしい。
本宮くんのことも思い出して、更にこんな美形に見詰められて、きっと僕は耳まで真っ赤になってるだろう。
「よっぽど良いことあったんだね。
オジサンは羨ましいよ」
大して年は違わないし、桐島さんはどう見たって三十には見えないけれど、大袈裟に芝居がかった様子でそんなことを言われて。
その時僕は、あまりの恥ずかしさに顔を上げられなくて。
だから、気が付かなかったんだ。
「いいなぁ…」
ポツリとそう呟いた桐島さんが、何処か悲しげに微笑んでいたことに。
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