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11 side 本宮柳
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~~ヴーッ ヴーッ ヴーッ~~
程無くして、スマホが着信を告げる。
バイトの後にマナーを解除し忘れていたようで、バイブの音が部屋に響くが、メールにしてはやけに長い。
急いで充電器の元に駆け寄ると、将吾さんからの通話の着信だった。
将吾さんと知り合って半年くらい経つが、普段はメールでの返信ばかりだから、将吾さんからの電話は珍しい。
いや、珍しいどころか、一度待ち合わせに遅れると連絡をくれたときを除くと、初めてではないだろうか。
浮き立つ気持ちを押さえつつ、通話をタップする。
「もしもし、将吾さん?」
『本宮くん? どうかした?』
ちょっと舌ったらずに聞こえるのは、寝惚けているのだろうか。
「すみません、こんな時間に。
寝てました?」
『ううん、まだ起きてたよ。
ちょっとお酒飲んでた』
甘えるようにふふふっと笑う将吾さんが、やけに可愛らしい。
「珍しいですね」
前に、わざわざ家で一人で飲むことはあまりないと言っていたことを思い出して、何の気は無しに漏らした言葉に返ってきたのは、ちょっとショックな言葉だった。
『今ね、地元の友達が出張帰りに泊まりに来てて。
あ、それでね、明日はカフェに行けないかも…』
『おーい、将吾ー!
いつまで電話してんだよー?
久々の親友との再開だぞー』
将吾さんの言葉に被せるように、電話口の向こうから酔っぱらっているであろう男の声がした。
『ちょっ…、うるさいよ。
重たいって…、どけよ!』
続いて、将吾さんの心底嫌そうな声。
普通だったら、嫌がる声が羨ましいなんて変なんだろうけど。
将吾さんはいつもどこか俺に遠慮がちだから、そんな心を許してるような声音に、嫉妬心がジリジリと燻る。
しかも、“重たい”って…。
肩でも組まれたんだろうか。
『将吾~!薄情だぞー!』
男の声が、やけに電話口近くに聞こえる。
『わかったよ、しょうがないなー。
ごめんね、本宮くん。
友達、酔っぱらっちゃってて。
また連絡するから』
困惑ぎみに将吾さんが謝る。
ここで、もっと話したいなんて言ったら、将吾さんはどうするだろうか。
友達を優先するか。
俺を取ってくれるか。
いや、困らせるだけだ。
辞めておこう。
「いえ、俺こそ遅い時間にすみません。
じゃあ、また来週…ですかね…?
あんまり飲みすぎないでくださいね。
お休みなさい」
喉元まで出かかった言葉をグッと飲み込み、努めて明るい声を出す。
『うん、ありがとう。
お休みなさい』
将吾さんの声音が少しだけ甘えたように聞こえたのは、きっと俺も酔っているからで。
俺の願望が聞かせた幻聴だったのかもしれない。
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