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12 side 本宮柳
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翌日のバイト中。
間もなく休憩と言う頃に、予想外の来客があった。
将吾さんだ。
昨夜は行けないかもと言っていたのに、地元の友達とやらは帰ったのだろうか。
逸る気持ちを抑え、まずは目の前の客のオーダーを取る。
オーダー片手に振り返ると、先程は扉の陰で見えなかったが、どうやら将吾さんは一人ではないことに気がついた。
将吾さんと同年代の、男。
将吾さんより少し背が高くて、がっしりした体型で。
きっと、出張のついでだからだろう。
ダークグレーのスーツに身を包んでいた。
特別目を惹くようなタイプではないと思う。
ちょっとガタイはいいほうだけど、きっと、オフィス街に行けばよくいるようなサラリーマン。
けど、学生の俺からしたら、スーツを着てるってだけで大人の男に見えて。
そんな大人の男に向けて、傍らで将吾さんが屈託なく笑うから、無性に悔しくて仕方なかった。
何か、からかってでもいるのだろうか。
男がぐしゃっと将吾さんの髪を掻き乱す。
ムッとした様子の将吾さんの横顔が見える。
けれど、きっとそんなスキンシップには慣れているのだろう。
将吾さんは本気で嫌がっているわけではないようで、何か文句を言いながらも、男に好きにさせていた。
『何触らせてんだよ…?』
自分のモノでもないのに、独占欲がジリジリと胸を焦がす。
俺にそんな権利はないのに、あの手を振り払ってしまいたい。
きっと、その時の俺は、ひどい顔をしていたに違いない。
「おい、ミヤ、どうした?
大丈夫か?」
バイト仲間の訝しむ声に、ハッと顔を向ける。
ダスターを持ったまま、テーブルの上はまだ全然片付いてはいない。
「ああ、悪い、何でもない。
ちょっと目眩がしただけだ」
適当な言葉で誤魔化すと、バイト仲間は特に詮索もせずに「飲みすぎか~?無理すんなよ~」と去っていった。
ふと将吾さん達の方に顔を向けると、ちょうどガラス越しに彼と目があった。
控えめに微笑まれて、なんだか疎外感を覚えてしまう。
俺にも、その隣のヤツに見せるみたいな表情を、してくれたらいいのに。
どろどろとした何かが、胸の中に渦巻く。
俺にはまだ理由はわからなかったけれど、この時確かに、はっきりとした嫉妬心が芽生えていた。
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