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13 side 本宮柳
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「お待たせしました。
こちらのお席へどうぞ」
引きつりそうになる顔を堪え、笑顔を向ける。
「あ、ごめんね、本宮くん。
友達が連れて行けってうるさくて。
酔ってたくせに、そう言う会話は覚えてるんだから…」
困り顔の将吾さんが、ここに来た理由を呆れたように話す。
「だってお前、あんなデレデレした顔で電話してたら、気になるだろ~?」
男の言う言葉など耳には入ってこない。
ただ、二人の親しさだけが目につき、苛立ちが募る。
相変わらず仲良さげな雰囲気の二人を、取り敢えず席に通す。
そう言えば、あんまり詳しく聞いたことはないが、将吾さんの恋愛対象って、今までも男だったんだろうか?
俺に告白してくれたくらいだから、少なくともバイか、それともゲイか、どちらかだろうけど。
この男は、学生時代の元カレとか、片想いの相手だったりするんだろうか?
もしもそんな相手だったら、いくらせがまれてもここには連れてこないだろうと冷静になればわかる筈だが、生憎この時の俺にそんな心の余裕はなかった。
苛苛を堪えて接客したつもりだったが、少しだけいつもより態度が冷たくなってしまっていたのだろう。
「ほんと、ごめんね。
食べたらすぐ帰るから」
お決まりのカフェラテとパンケーキを差し出すと、将吾さんがまた謝ってきて。
ちょっとだけ怯えたような様子が、更に俺を苛立たせる。
けれど、友人の男は特に気にもならないらしい。
「お前、相変わらず甘いもん好きだよなぁ。
太るぞ~…って、もう太ってるか」
将吾さんのことなら分かりきってるとでも言いたげな口調。
「煩いな、僕は標準だよ」
少しふくれて将吾さんが言う。
俺の知らない、将吾さんの表情。
ダメだ、接客中だ、笑え。
自分に言い聞かせても、顔の筋肉は言うことを聞かない。
「そうですよ。
俺は、将吾さんくらいがちょうどいいと思いますけど」
思わず、好戦的な口調で、会話に割って入る。
「すみませ~ん、オーダーいいですかぁ?」
背後から聞こえた間延びした声に、ハッと我に返った。
目の前では、将吾さんが驚いた顔をしていて。
向かいに座る男は、余裕の表情で可笑しそうにニヤついていた。
何だかよくわからないが、この男に負けたような気がして、この場にいられなくて、逃げるようにオーダーを取りに行く。
結局、将吾さんとは顔を合わせることも出来ないまま、休憩に入る。
パンをかじりながらLINEを返していると、メールの着信音が短く鳴った。
大学の友達はあまりメールはしてこない。
案の定、送信元は風間将吾の表示。
やはり、嫌な思いをさせてしまったのだろうか。
じわりと滲む手のひらの汗を拭い、メール画面をタップする。
―――――――――――――――
from:風間将吾
title:
本文:忙しいのに邪魔してごめんね。
―――――――――――――――
短い、お詫びのメール。
違う、将吾さんが謝ることじゃない。
貴方を邪魔だなんて、思う筈ない。
俺がガキなだけだ。
慌ててフロアに向かうが、既に将吾さんは帰った後で。
何と返信してよいかわからず、時間だけが過ぎていく。
結局何も返せないまま、休憩を終えてフロアに戻った。
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