アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
14 side 本宮柳
-
「お~い、ミヤくん」
バイトを終えて裏口から外へ出ると、大通りに出たところで馴れ馴れしく呼び止められる。
先程の、男だ。
聞きたくなかったその声に思わず眉を寄せた。
「何でしょうか?」
慇懃無礼な俺の態度にも、男は余裕の笑みを崩さない。
「突然、ごめんね~。
ミヤくんはさぁ、将吾のことどう思ってるの?」
いきなりの質問に、どう答えていいものか、逡巡する。
将吾さんは、どこまでこの男に話したのか。
この男と将吾さんは、ただの親しい友人に過ぎないのか。
「どういう…、意味でしょうか…?」
ジリジリとした腹の探り合いに居心地が悪くなり、漸く口を開くと、男が説明を加えてくる。
「そのままの意味だよ。
将吾を何とも思ってないなら、弄ぶのはやめてくれないかな?
実は、今度こっちに転勤になるかもしれなくてね。
今回の出張は下見と挨拶も兼ねているんだ。
せっかくだから、久々に将吾に会いに来たら、変な男と知り合ってるし。
将吾の気持ちを知りながら、弄んでるんだろ?
その気がないなら、やめてくれないかな?
将吾は俺が大切にするからさ」
“弄んでる”。
その言葉を、咄嗟に否定できない自分に、苛立つ。
けれど、それと同時に、はっきりと自覚した。
俺は、将吾さんに恋愛感情を抱いている。
将吾さんを、他の男になんか渡したくない。
笑うなら、こんなヤツじゃなくて俺の前で笑っていてほしい。
ちょっと嫌がる顔も、涙も、他の男になんか見せないでほしい。
「あなたに教える必要は、無いと思いますが?」
「将吾が君を好きだと言ったのは、半年も前の事なんだろ?」
嘲るような笑みに、焦燥感が募る。
「………」
無言のままジッと睨む。
「まあ、いいや。
君がどうしようが、俺は俺のしたいようにするだけだから。
君もせいぜい頑張りなよ」
男はくるりと背を向けると、ヒラヒラと手を振りながら駅へと向かって去っていった。
暫くその場で動けずにいたらしい。
ハッと気付くと、男の姿は既に見えなくなっていた。
じわりと、嫌な汗が背中を伝った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
38 / 131