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先週は結局カフェには行けず、何の連絡も取れないままに今週もまた金曜の夜が訪れた。
このままもう、本宮くんと会うことはなくなるのだろうか。
そしていつか、本宮くんの記憶から僕という存在は消えて無くなるのだろうか。
何だか視界がぼやけると思ったら、携帯を握る手にぽたぽたと雫が落ちていた。
手の甲でグイっと滲む目元を拭う。
明日は土曜だ。
赤くなってしまったって、心配してくれる人も、気付いてくれる人もいないのだから、構わない。
グイグイと目を擦っていると、膝に置いていた携帯が、着信を告げた。
画面には“本宮柳”の文字。
とっさに理解が追い付かず、擦りすぎた目で凝視する。
どうしよう。
出なければ。
拭いきれない恐怖心を堪え、通話ボタンを押す。
「はい、風間です」
応答する声が固くなるのが、自分でもわかった。
けれど、予想に反して、携帯から聞こえてきたのは、いつもの優しい本宮くんの声で。
『将吾さん、遅くにごめんなさい。
今、電話大丈夫ですか?』
「うん、平気だよ」
少しだけほっとしてそう答えると、話があるから明日会いたいとのこと。
直接会って話したいことって、何だろうか。
最後通告?
声音は優しいけれど、最後だからこその優しさ?
いつものネガティブが、どんどん加速する。
『じゃあ、お休みなさい、将吾さん』
「お休み、本宮くん」
名残惜しかったけれど、本宮くんから通話を切られるのが怖くて、自らプツリと通話を切った。
ふと、メールの受信画面を開き、本宮くんからのメールを見返す。
彼からのメールは、いつも優しくて、前向きで、明るくて。
こんな僕でも、少しだけ前向きを分けてもらえるような気がして。
メールが届くたび嬉しくて。
ああ、まだ友達でいさせてくれるんだなって。
幸せで。
好きで、好きで、好きで。
降り積もる彼への想いは、限りなくて。
明日、何を言われても、受け止めよう。
たった半年の出来事だったけれど、十分過ぎるほどに幸せをもらったじゃないか。
例え辛い結果が待っていても、彼への想いを抱いて、思い出と共に一人生きていけばいい。
ふっと息をついて、パタンと携帯を閉じる。
携帯とともに閉じた瞼が、重苦しい。
明日こんな顔で行ったら、本宮くんは遠慮して別れを告げづらいかもしれない。
優しい本宮くんに心配はかけたくなくて、最後の最後に同情なんてされたくなくて。
少しだけ腫れてしまった瞼を濡れたタオルで冷やしながら、ベッドに横たわった。
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