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翌日の土曜日。
約束の時間にカフェを訪れると、既に混雑時は過ぎていて、すぐに本宮くんが席に案内してくれた。
こんなときにばかり、空いているんだから。
心の準備をしてきたつもりだったけど、もう少し時間が欲しかったのに。
「ご注文が決まりましたらお呼びください」
決まり文句を優しく告げて、本宮くんが恭しく頭を下げて去っていく。
本宮くんって顔も整ってるけど、それだけじゃなくて、背も高くて足も長くてすごくスタイルがいいから、こういう仕草が様になる。
この姿もこの背中も見納めかと思うと、熱いものが込み上げてくる。
グッと何かを飲み込むように力を入れて、滲みそうになる涙を堪えて。
「すみません、注文お願いします」
少しでも本宮くんに無駄な気遣いをさせずに済むように微笑んで、いつものパンケーキとカフェラテを注文する。
口にしたパンケーキは、いつもと変わらずに美味しいはずなのに、何故か少しだけほろ苦い気がして。
うまく飲み込めなくて。
漸く食べ終えた頃には、本宮くんの姿は店内に見当たらなかった。
ヴーッ…ヴーッ…
ふいに、ポケットの中の携帯が震えだした。
そういえば、電車を降りてからも、マナーモードを解除していなかった。
急いで画面を確認すると、“本宮柳”の表示があって、慌てて通話ボタンを押す。
「はい、もしもし」
店内だから小声で応答すると、耳にはいつもの優しい本宮くんの声がじんわりと染み込む。
『お待たせしました。
まだ食べてます?』
「ううん、待ってないよ。
ちょうど食べ終わったところで電話鳴ったから、びっくりした」
タイミングの良さにふふっと笑みを溢すと、本宮くんも柔らかな声音で返事をくれる。
『よかった。
今着替え終わったんで、裏から出て正面に回りますね。
中入るとうるさくなるから、外で待ってます。
ゆっくりで大丈夫だから、慌てないで来てくださいね』
確かに、このカフェは――欲目もあるかもしれないけれど――本宮くん目当ての女の子が多いから、私服の本宮くんが中に入ってきたら、女の子達がざわつくだろう。
「うん、わかった。
今行くね」
通話を終え、ふぅーっと大きく息を吐く。
頬をパチンと叩いて気合いを入れて。
会計を終えると、これからの本宮くんからの話に不安を抱えながら、意を決してお店のドアをくぐった。
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