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「何かありました?」
外で待っていてくれた本宮くんに開口一番に問い掛けられる。
「何かって?」
質問の意図がわからずに問い返すと、何故か本宮くんはおかしそうに笑ってて。
「将吾さん、さっき頬を叩いてたから。
何か試合とか始まるみたい」
まさか、見られていたなんて。
あまりの恥ずかしさに、顔が熱くなる。
君の話を聞くために気合いを入れてたなんて説明できるはずもなくて。
「あー、えっと…、お腹いっぱいになったら、ちょっと眠くなって」
「ふーん…」
適当に誤魔化すと、何故か本宮くんは不信な目線を向けてきた。
不自然だったかな…。
何となく少し気まずくなって。
黙ったまま、人のいないところで話したいという本宮くんについて歩く。
若干機嫌の悪そうな彼の隣に並ぶことすら出来ずに、斜め後ろを歩いていると、本宮くんが小さく溜め息を吐くのが聞こえた。
心に、ジクリと痛みが走る。
その溜め息の、意味は?
直接会って、人の居ないところでする話って…?
どうせなら、昨日電話で振ってくれた方が、楽だったかもしれない。
決意してきたはずなのに、いざその時が近付くと、面と向かって最後通告を受ける勇気なんて微塵も残っていなくて。
辛うじて涙がこぼれ落ちるのだけは堪えているが、それもいつ決壊するか分からない。
「将吾さん?」
本宮くんの声にハッと顔をあげると、彼との距離が少し空いていて。
恐怖と不安が、僕の足を止めていたようだ。
「あ、ごめん…!」
慌てて駆け寄ると、本宮くんは何だか切なそうな顔で。
きっと優しい彼は、どうやって僕を傷付けずに振るか、考えてくれているんだろう。
けれど、その優しさは、今の僕には残酷だ。
本宮くんに連れてこられたのは、いつかのカラオケボックス。
僕たちのこの関係が、始まった場所。
この、始まりの場所で、今日、終わるのか。
緊張を通り越しすぎて、どこか他人事のようにすら感じられる。
受付を済ませる本宮くんは、さっきから一度もこちらを振り向かない。
振り向かれたら、現実が押し寄せてきそうで、僕も声すらかけられないのだけれど。
カラオケボックスって、手軽に他人を遮断できるから、店員は慣れているんだろうか。
それとも、ただプロとして淡々と接客してるのか。
楽しいはずのカラオケボックスの受付で、男二人が神妙な面持ちをしていても、店員は事務的に作業を進めている。
途中、一組のカップルが部屋から出て来たけれど、土曜だから皆フリータイムばかりでほぼ満室だとかで、受付自体は混雑していなくて。
ほとんど人目につかなくて助かった。
「行きましょうか」
目線を合わせずに言われ、黙って本宮くんの背中を追う。
たどり着いた部屋は、偶然にも始まりの場所だった。
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