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「………?」
予想だにしていなかった言葉に、暫し呆然とする。
驚きのあまり、あれだけ流れていた大粒の涙も、ピタリと止まった。
今、本宮くんは、なんと言った?
“好きです”と、聞こえた気がする。
いや、まさか、幻聴だろう。
ポカンと間抜けな顔を晒していると、本宮くんが不安そうにこちらを窺ってくる。
「将吾さん…?
俺のこと、もう、キライ?」
キライ? きらい? 嫌い?
漸く彼の言葉を理解すると、慌てて首を振る。
本宮くんのことを嫌うなんてこと、あるはずない。
「…すき……好き!」
気の利いた言葉など思い浮かばず、ただただ好きと繰り返す。
手首を掴んでいた本宮くんの手が緩み、ふわりと全身を包み込むように抱き締められた。
「…良かっ…たぁ…」
大きな吐息とともに、頭上から安堵の声がした。
「本宮くん?
あの…ホントに…僕でいいの…?」
未だ実感が湧かず、ソファで隣に座る本宮くんを見上げ、問い掛ける。
「将吾さん“で”いいんじゃなくて、将吾さん“が”いいんです」
迷いなく言い切る彼は、すごく大人びていて。
ホントにかっこよくて。
こんな人が、僕に“好き”だなんて、現実なのだろうか。
「でも、僕なんか…」
夢でしかあり得ない展開に、どうしても付いていけずにいると、一転して本宮くんが拗ねた子供のように口を尖らせる。
「俺の好きな人のことを“なんか”って言わないでくれません?」
「え? でも…」
なおも言い返そうとする僕の頬を、本宮くんが軽く摘まむ。
「“でも”も禁止です。
うじうじしてる貴方も可愛いですけどね。
せっかく両想いなんだから、笑ってください」
「ぃひゃいょ。離ひて…」
そんなに強く摘ままれたわけではないが、抗議の目を向けると、ふふふっと笑われて。
「じゃあ、ちゃんと可愛く笑ってくださいね」
可愛いなんて、あるはずないよ。
本宮くんって、結構趣味が悪かったのかな。
そういえば、前に一緒にいた子も……。
「……!!」
ハッとした僕に気付いて、本宮くんが頬を摘まんでいた手を離す。
「将吾さん?」
不思議そうに見詰められ、降って湧いた疑問を伝える。
「本宮くん、彼女は?
ペットショップで、デートしてたよね…?」
「はぁ!?」
本宮くんが、目を丸くして大声を出す。
「ちょっと!耳元で大きな声出さないでよ」
「いや、何であれがデートなんですか?
あれはダチの彼女の友達とかで、名前も知りません!
勝手に連絡先ばらされて、付きまとわれて迷惑してたんですよ!?
やっと諦めてくれたみたいて、最近音沙汰ないですし。
そもそも、彼女いたら最初から中途半端なことしません!」
物凄い勢いで否定されて、余りに必死な彼の様子に、思わず笑いを漏らす。
「そうだったんだ、良かったぁ」
確かに、ちょっとぶっきらぼうで本宮くんらしくないとは思ったけど、それが彼の素なんだと思ってた。
けれど、僕の勘違いだったようだ。
「じゃあ、誤解も解けたところで、改めまして」
本宮くんがコホンと咳をして、姿勢を正す。
「え…?」
何かと思い、僕も身構えると、彼は僕をじっと見詰めながら、恭しく告げた。
「風間将吾さん、貴方が好きです。
俺と、付き合ってください」
途端、止まっていた涙がまた流れ出して。
「ぅ~…。
もと…ゃ…くん…」
ヒックヒックと嗚咽を漏らし、もう言葉を発することもできない僕を、本宮くんがまた優しく抱き締めてくれて。
「将吾さ~ん?
ねぇ、付き合って?」
今度は可愛くねだるように、少しからかうように、耳元で甘い声を出される。
きっと、真面目に言われると、僕の涙が止まらないから、わざとそんなノリで話してくれてるんだろう。
何とかコクコクと頷くと、ありがとう…と本宮くんが呟くのが聞こえた。
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